蔵王の樹氷ざおうのじゅひょう

蔵王の冬のシンボル。シベリアから吹いてくる季節風が、日本海の水分を含み朝日連峰を越える時急激に冷却されて水滴となり、これと雪雲のなかの雪片がアオモリトドマツに繰り返し付着して凍りつき樹氷となる。風上に向かって成長し、さらにその上に雪が積もって人の形に似てくることから、スノーモンスターの愛称もある。
 樹氷ができる時期は12月下旬から3月上旬。見ごろは1月下旬から3月上旬である。例年、12月下旬から3月上旬に蔵王樹氷まつりが催される。
 巨大な樹氷群は山形県側の地蔵山山頂直下の樹氷原で見られる。樹氷群を観るためには、蔵王温泉スキー場*の蔵王ロープウェイ*で地蔵山頂駅に向かう。樹氷原ではライトアップもされ、期間中は夜間運行もされる。なお、宮城県側*では杉ガ峰~刈田岳付近にもっとも発達する。
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みどころ

樹氷は、海外ではあまりみられず、蔵王連峰を中心に東北地方の奥羽山脈の一部の山域(八甲田山、八幡平、吾妻山)の亜高山地帯にしか現出しない。理由は亜高山針葉樹林の代表種アオモリトドマツなど着氷着雪が起こりやすい常緑針葉樹の植生であること、多量の過冷却水滴と雪が一定方向の強風で運ばれてくること、樹林帯が埋もれない適量の降雪であることなど、現出する条件がこの山域でしか揃わないためだといわれている。気候学的にも地形学的、植物学的にも興味深い現象だが、観光資源としても世界的にも希少性があり、極めて貴重な現象である。
 「静寂な冬山をますます静寂にするものは、枝一面に咲いた樹氷の花である。この景色を一度見た人は、生涯その美しさを忘れないであろう」と、雪の研究で知られる中谷宇吉郎が絶賛している景観は、厳しい環境下でしか現出しないが、ロープウェイなど、樹氷観光のインフラが整備されおり、幅広い層の観光客が観賞を楽しむことがきる。
 樹氷の間を縫って滑るスキーはダイナミックでスリル満点。この山ならではの体験ができる。(志賀 典人)
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補足情報

*蔵王温泉スキー場:広大な地蔵山北西斜面に展開し、全国有数の規模と樹氷で知られるスキー場である。標高850mから1,700mの間に14のゲレンデとそれらを結ぶ12つのコースがあり、ロープウェイ地蔵山頂駅直下のザンゲ坂を始点として末広がりにスロープが設けられている。樹氷がもっともみごとなのは樹氷原コースである。
*蔵王ロープウェイ:地蔵山山頂直下の樹氷原には蔵王温泉スキー場の蔵王ロープウェイを利用して登ることができる。樹氷観賞を主とする場合は、蔵王ロープウェイで、蔵王山麓駅から樹氷高原駅を経て地蔵山山頂駅で登るのが便利。そのほか、スキーがてらであれば、蔵王中央ロープウェイで温泉駅から鳥兜駅を経て、あとはリフトを乗り継いで樹氷原へ登る方法や蔵王スカイケーブルで上の台駅から中央高原駅を経て、同じくリフトを乗り継ぎ、樹氷原へ向かう方法がある。
*宮城県側「すみかわスノーパーク」から雪上車で、刈田岳山頂直下の樹氷を見に行くことができる。雪上車は完全予約制。「すみかわスノーパーク」までは仙台駅や遠刈田温泉からバス便もある。

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