天然秋田杉の古里「仁別国民の森」てんねんあきたすぎのふるさと「にべつこくみんのもり」

JR秋田新幹線・奥羽本線秋田駅から北東へ23km、秋田市の東端にそびえる太平山の西麓一帯に「仁別国民の森(仁別自然休養林)」は広がる。「仁別国民の森」は秋田藩の藩有林*1として保護されていた歴史があり、現在は国有林で2795万m2の広大な面積を有し、標高700~800mまでは、秋田スギを主体とする針葉樹とブナ等の広葉樹の混交林、標高800m以上はブナ、ミズナラを主とする広葉樹が広がる。他にもブカエデ、ヤマザクラなども見られる。混交林のなかには、根元から分かれた2本の天然の秋田杉「めおと杉」がみられる。このスギの幹周りは12m、樹高は向かって左の女木が35m、右の男木が36m、樹齢は200から300年といわれている。「めおと杉」までは駐車場から遊歩道で渓流を渡って徒歩10分ほど。一帯には森林博物館*2や樹木見本園、人工池、遊歩道、展望台などが整備されているほか、渓谷沿いにはキャンプ場が点在する。
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みどころ

大平山(標高1171m)を望む展望台への「みはらしの径」(750m)、渓流沿いの「せせらぎの径」(460m)、秋田杉の自然林の中を「めおと杉」を経て吊り橋で渓流を渡る「めおと杉の径」(470m)の3つの遊歩道が整備されており、ふかふかとした杉や広葉樹の落葉や腐葉土を踏みしめながら森林浴をたっぷり楽しむことができる。「めおと杉」は古くから山仕事をする人々から山の神木として祀られてきたといわれており、いまもその神秘的な風格を備えている。森のベストシーズンはやはり新緑と紅葉期だ。博物館では、自然観察のガイドも行われている。
なお、「仁別国民の森」に通じる林道(仁別林道)*3は、幅員が狭いため、大型バスの通行は規制されており、伐採作業の車も通行するので運転には注意が必要だ。散策にはクマ出没対策も必須。
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補足情報

*1 秋田藩の藩有林:秋田杉は古くから用材として貴重なものとされ、文禄年間(1592~1596)年には豊臣秀吉が伏見城建築に際しても献上されたという。江戸時代に入り、久保田城の建設、阿仁鉱山の開発などの材木の需要の高まりや薪炭の消費拡大に伴い、17世紀後半には森林資源の減少が課題となった。そのため秋田藩は森林資源の保護・育成策を講じたものの、藩の財源確保のための伐採などもあり、森林資源の減少は深刻化した。19世紀入り、抜本的な林政改革が行われ、森林資源状況の把握と植林の奨励、山林の取り締まり強化など「「山林取立」(森林資源の繁茂させること)を目標に強力に実施したことから、藩有林において秋田杉などの樹林が保護育成された。これを明治期に入り、官有林へと移行した。
*2 森林博物館:1964(昭和39)年開館。天然秋田杉成立に関する資料をはじめ、秋田杉の年輪、動植物の標本、むかしの林業用具、外国の伐採用具、木工芸品、森林鉄道蒸気機関車などを展示している。ボランティア案内人による周辺散策ガイド活動もある。入場料無料。2023年度の開館日は6月3日から10月30日までの土曜日・日曜日。企画展などで一部平日に開館する場合あり。秋田森林管理署まで確認のこと。
*3 仁別林道:2023年7月現在、通行不能箇所あり。秋田森林管理署または林野庁WEBサイトなどオフィシャル観光情報等を確認のこと。