大曲の花火おおまがりのはなび

JR秋田新幹線・奥羽本線大曲駅から南西に2kmほどの雄物川河畔「大曲の花火」公園で毎年8月最終土曜日に全国から約30社の花火業者が参加し、花火師たちが腕を競い合い、厳正な審査が行われる競技大会。17時10分から始まる「昼花火の部」と18時50分から始まる「夜花火の部」と合わせて約1万8千発の花火が打ち上げられる。
 「大曲の花火」は、1910(明治43)年に諏訪神社*1の祭礼の余興として開催された「奥羽六県煙火共進会」から始まり、1915(大正4)年に「全国花火競技大会『大曲の花火』」という現在の名称となった。
「昼花火の部」では参加各社が色煙で空を彩る「煙龍(煙物)」や、牡丹や菊の花模様を描く「割物」など5号玉を5発打ち上げて競う。夜花火の部では10号玉*2(尺玉)の「芯入割物」「自由玉」の2発と花火の既成概念にとらわれない「創造花火」を参加各社が披露し、技術、デザイン、構成、創造性などを競い合う。
 大曲駅から南に約800mのところには、2018(平成30)年に開館した、花火の歴史や製造方法、鑑賞の仕方を学ぶことができる「花火伝統文化継承資料館はなび・アム」*3がある。
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みどころ

技術的にも芸術性、創造性においても、最高水準の日本の花火の素晴らしさを堪能することができることは間違いない。また、大曲は、横手盆地(仙北平野)から北西に向け雄物川が流れ出る位置にあり、背後に山々がつらなるため、広々とした雄物川河畔で音楽とともに上げられる花火の音は山々に反響し音響効果も抜群である。日本では「昼花火」の競技大会はここだけで、夜の花火とは異なった趣を楽しめる。さらに競技会の合間にワイドスターマイン*4が打ち上げられるが、これもまた壮観。
 花火大会には全国から75万人ほどが集まると言われ、市内は大混雑になるので、会場の雄物川河畔「大曲の花火公園」への移動には、十分に時間的な余裕が必要だ。また、有料観覧席が設けられ当日券もあるが、できれば事前に確保しておきたい。
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補足情報

*1 諏訪神社:大曲の産土神で、創建は延暦年間と伝えられている。諏訪神社における花火に関する記録としては、1868(慶応4・明治元)年作といわれる「大曲村年中行事絵巻物」のなかに花火が描かれている。また、1826(文政9)年に大曲村に入った紀行家菅江真澄は7月6日の「大曲ノ郷眠流」(「月の出羽路」)の挿絵でも花火を描いている。また、秋田へ花火がもたらされたのは、江戸時代初めに、佐竹家が常陸国から秋田に転封した際に花火師が帯同していたことによるという伝承が残されている。その佐竹家がいち早く花火を取り入れていたことは、戦国末期以降に成立したという軍記「北条記」にも、転封前の1585(天正13)年に、野州(栃木県栃木市)藤岡で対陣した際、「敵陣にはな火を焼立ければ、味方の名侍とも花火をくくりて是も同じ焼立ける」と花火を上げたことが記録されている。
*2 10号玉:30cmの玉を330m上空まで打ち上げ、直径300mの大輪を咲かせる日本を代表する花火。
*3 「花火伝統文化継承資料館はなび・アム」:入館無料。常設展示のほか、収蔵している花火に関する資料についても順次企画展示している。高精細な花火映像を4面マルチスクリーンに映写する「はなびシアター」、自分がデザインした花火をスクリーンで打ち上げ体験できる「はなび創作工房」などもある。
*4 スターマイン:速射連発のことをいう。点火は、かつては手動であったが、現在は、コンピュータ制御による自動点火が主流。

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