長崎くんちながさきくんち

長崎市内の中心部で披露される。特に諏訪神社*とお旅所*と呼ばれる大波止の地に作られた仮宮などで奉納踊りが披露される。くんち*の語源は、旧暦の9月9日を良き日として祝う中国の風習が伝わり、9日(くにち)をくんちと読み、祭礼日の意味としたとする説が一般的である。おくんちは長崎市では尊称をつけて呼ばれており、御宮日とか御九日とか書く。この諏訪神社の秋祭りは、キリシタン信仰を圧倒するため長崎奉行が特に力を入れたといわれ、祭好きの長崎でも最も盛大な行事であり、国の重要無形民俗文化財に指定されている。 
 くんちは風流を持つ祭礼であるとされている。風流とは「斬新なアイディアにより毎回目先を変える趣向で見物人を驚かすこと」であり、長崎の町人は自ら楽しむ祭りへと時代とともに変化させてきている。踊りも新しいものをとりいれてきているが、特に傘鉾*は当初はシンプルなものであったが、高価な布に刺繍を施される様になって、100kg以上のものもある。
 1634(寛永11)年に、当時の太夫町(後に丸山町と寄合町に移る)の二人の遊女、高尾と音羽の両人が、諏訪神社神前に謡曲「小舞」を奉納したことが長崎くんちの始まりと言われている。長崎では「出島」埋築が着工され、「眼鏡橋」が架けられた年である。江戸時代には長崎奉行の援助*もあって盛んになり、幕末になると歌舞伎を模した奉納踊、明治期には唐人船といった外国船の曳き物が登場するなど、貿易で栄えた長崎の豊かさと比例するように次第に豪華になっていった。各時代の世相や流行が反映しながら「長崎くんち」の奉納踊は確立されていった。
 現在、踊町は長崎市内に全部で58ヵ町あり、全町が7つの組に区分されおり、奉納踊を出す当番は7年に一度回ってくる。
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みどころ

長崎くんちは6月1日の「小屋入り」から本格的な稽古が始まり、最高潮は踊りが奉納される10月7~9日の3日間である。7日朝、笛・太鼓のシャギリ*に合わせ各町の奉納踊りが神社から市内に出たのち、午後に「お下り」といって諏訪・住吉・森崎の三体の神輿が諏訪神社の石段をかけ下り、大波止のお旅所*へ向かう。奉納踊りが市内中心部で披露される。特に諏訪神社、お旅所、中央公園*、八坂神社*で各町の踊りが順番で行われる。観客が踊りの後に「モッテコーイ」や「ショモーヤレー」の掛け声をかけアンコールを要求する。そのたびに引き戻されて踊りの再演となり盛り上がる。 
 奉納踊りの主なものは、唐人服の玉使い・龍使いが20mもの龍をラッパ・ドラに合わせてくねり踊らせる有名な龍(じや)踊りや、潮を2mも吹き上げる鯨の潮吹き、阿蘭陀万歳、太皷山(コッコデショ)、川船、唐人船など、各町趣向を凝らした踊りを披露する。神社への奉納を終えると、まちなかの会社や店舗、各家を訪れ、踊りを献上する「庭先回り(にわさきまわり)」が行われて間近に見目ことができ、夜まで熱狂する。
 9日は奉納踊りののち、三体の神輿が神社に「お上り」になるのも見どころのひとつで、これによって豪華な祭りは終わる。
7年に1度だけ当番になるので、各町も力が入る。
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補足情報

*諏訪神社:鎮西大社と称えられる長崎の総氏神。諏訪・森崎・住吉の三社が祀られている。長崎市上西山町18番15号。
*お旅所:大波止の地に作られた仮宮で、諏訪神社からの神様が10月7日、8日、9日の3日間逗留する所。長崎市元船町。
*くんち:西九州北部の方言ともいわれ祭の総称。長崎以外にも佐世保くんち、平戸くんち、佐賀県の唐津くんち、有田くんちなど行われている。
*傘鉾(かさぼこ):祭礼や祝賀の飾り物の一つ。大きなかさの上に、ほこ、なぎなた、造花などを取りつけたもの。京都の祇園会、東京の山王祭、神田祭などは有名。
*長崎奉行の援助:長崎奉行がキリシタン禁圧のため進められた政策の一部とも言われている。
*シャギリ:民俗芸能や祭礼などの練物(ねりもの)の行列の途中で、笛に太鼓・鉦(かね)をまじえて奏する囃子(はやし)。
*中央公園:めがね橋の西側にある公園。「長崎ランタンフェスティバル」の会場のひとつになっている。諏訪神社、お旅所、八坂神社の3か所の桟敷席は4人一枡単位で販売されるが、中央公園だけは1人単位で購入できる。長崎市賑町5。
*八坂神社:ぎおん社とも呼ばれているが、明治維新の神仏分離に伴い、「祇園社」から「八坂神社」に改称された。長崎市鍛冶屋町8番53号。
関連リンク 長崎くんち(長崎伝統文化振興会)(WEBサイト)
参考文献 長崎くんち(長崎伝統文化振興会)(WEBサイト)
長崎市公式観光サイト「travel nagasaki」(一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会)(WEBサイト)
ながさき県の歴史散歩 山川出版社
長崎の祭とまちづくり 長崎文献社
長崎県の歴史 山川出版社

2024年09月現在

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