祖谷のかずら橋いや    ばし

JR土讃線大歩危駅からバスで約25分。祖谷渓の上流にかかる吊り橋で、その名のとおり野生のカズラ、シラクチカズラ(学名 サルナシ)*を主材料にして作られている。長さ約45m、幅2mで、中央の水面からの高さ14mの所にかかっている。
 カズラを編んだ敷綱(しきづな)に、栗の木を割ったサナギと呼ぶ丸太をくくりつけて床部を造り、橋の手すりに相当する太い壁綱(かべづな)や、両岸の樹木につなぎとめる吊綱(つりづな)までシラクチカズラを使っている。祖谷川に架かるカズラのつり橋は、かつては祖谷地方の重要な交通手段であり、1646(正保3)年には祖谷地方の7か所が記されている。1793(寛政5)年の文書では、いまの場所に架かるかずら橋が「善徳の橋を第1とし」と記され、かずら橋の中でも最も立派だったようだ。
 1911(明治44)年の調査では、東・西祖谷村で8つのかずら橋が、大正に入ると旧西祖谷村では3つ残っていて、1921(大正10)年には、善徳の橋1つとなってしまった。そして、1923(大正12)年には、小学生の安全確保のため、板敷きの針金の吊り橋にかけ替えられ、かずら橋は消失してしまった。しかし、町の発展には観光目的のかずら橋が必要と、1928(昭和3)年に、針金の吊り橋の川下に、新しいかずら橋が復活したのである。橋のかけ替えは3年に1度行ないながら、現在までかずら橋は存続することになった。
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みどころ

原始的形態をもつカズラの吊り橋は、全国でもここだけといわれ、国の重要有形民俗文化財に指定され、多くの観光客が訪れている。かずら橋がギシギシ揺れて怖いと感じる人は、下を流れる川も見えるので、下を見ずにやや前方を見ながら、カズラにつかまりながら、歩いていくとよい。上流の渓谷の岩や橋近くの砂防堰堤周辺の岩は、人工につくった擬岩であるが、よく見ないと本物の岩と思うことだろう。
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補足情報

*シラクチカズラ:カズラの一種だが、標高1,000m以上の高山にだけ自生する。断崖や古木の幹を伝って直線状に伸び、太いものは直径15cmほど。軽く、強靭だが、カズラを蒸す(蒸気で蒸して柔らかくする)と自由に曲り、縄のように編むことができる。
関連リンク 大歩危祖谷ナビ(三好市観光協会)(WEBサイト)
参考文献 大歩危祖谷ナビ(三好市観光協会)(WEBサイト)
『土木遺産XI Vol.262 』 建設コンサルタンツ協会
『徳島県の歴史散歩』

2023年02月現在

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