祖谷渓いやけい

剣山に源を発して西流する祖谷川は、松尾川などの支流を集めて吉野川に合流する。この祖谷川の下流部に発達した渓谷が祖谷渓である。一番の難所の約200mの七曲りの断崖、祖谷渓を見渡せるところに小便小僧がある。その昔、子どもや旅人がここで度胸試しをしたという逸話があるところ。近年、注目されているのが「ひの字渓谷」。蛇行する祖谷川が、ひらがなの「ひ」の字に似ているところから、この名がついたが、その見事な景観を祖谷街道から一望できる。
 一帯は平家の落人伝説*がある隠れ里(地理学的には隠田集落という)といわれ、山麓にへばりつくような住宅が点在する。重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けている落合集落*もある。重要有形民俗文化財の「祖谷のかずら橋」は祖谷渓の上流にある。
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みどころ

四国山地を横断する激流は、10kmにわたって数十mから数百mのV字の狭谷をつくりだす。降水量も多く、樹木が生い茂り、新緑や紅葉などの四季折々の渓谷美を楽しむことができる。スリルの多い祖谷渓で、のんびりと過ごすには、祖谷渓の一軒宿の祖谷温泉がおすすめ。深い谷をケーブルカーで祖谷川まで降りていき、露天風呂を満喫できる。
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補足情報

*平家の落人伝説:平家の落人が住みついたという村の伝説。平家谷ともいわれるこれらの村は、熊本県五箇荘、宮崎県椎葉、徳島県祖谷渓、薩南諸島などの山間僻地や離島にあって独特の言語・風俗を伝え、他の里と交際も通婚もなかった。山村に古風な習俗の残存することから生まれた伝説。祖谷渓にある「平家屋敷民俗資料館」は、屋島の合戦で敗れ、この地に住みついた安徳帝の御典医、堀川内記の子々孫々の屋敷。薬草の豊富な祖谷の地で、医業と神官を務める。屋敷内には樹齢800年の老樹(「金もくせい」「銀もくせい」)、江戸時代の民家を保存した館内には鐙・旗・古文書・生活用具などが展示されている。
*落合集落:山の急斜面に沿って広がる集落である。江戸中期から昭和初期に建造の家屋や石垣が急斜面に張り付くように、つくられている。対岸の中上地区から保存地区を眺望すると、三所神社周辺の鎮守の森を始めとして、斜面いっぱいに耕作地と民家が一体となった壮大な景観が展開する。
関連リンク 大歩危祖谷ナビ(三好市観光協会)(WEBサイト)
参考文献 大歩危祖谷ナビ(三好市観光協会)(WEBサイト)
『秘境とりっぷ』三好観光ガイド

2023年02月現在

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