倉敷川畔の街並みくらしきがわはんのまちなみ

第二次世界大戦の空襲を免れた倉敷には、江戸時代から昭和まで各時代の建物が残っている。JR倉敷駅から南に徒歩15分ほど、倉敷川畔と鶴形山を含む倉敷美観地区*は、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。江戸から明治にかけて運河として利用された倉敷川の川畔には、白壁の商家や土蔵が並び、川沿いの柳並木と調和して、しっとりと落ち着いた雰囲気が漂う。大原美術館、倉敷民芸館、倉敷考古館をはじめとする倉敷を代表する文化施設もこの地区に集中している。
 美観地区のある一帯はかつて「吉備の穴海」とよばれた内海で、しだいに高梁川の運ぶ土砂が積もって干潟になっていき、近世以降の干拓により陸続きとなった。1642(寛永19)年に天領となって以降は、備中南部における物資の集積地として発展し、倉敷川沿いには白壁に本瓦葺きの町屋と土蔵を中心とした街並みが形成された。とくに江戸時代中期以降、塩分が多く米作りには向かなかった干拓地で、綿やイ草などの換金作物が盛んに生産されるようになり、それらを扱うことで成功した商人たちが豪壮な屋敷を建て、その富を誇った。
 明治維新後は一時衰退するものの、英国式の最新の機械と施設を備えた倉敷紡績所が代官所跡に創設され、国内有数の紡績会社へと成長するなかでまちは大きく発展し、倉敷川周辺には数多くの西洋建築が建てられた。
#

みどころ

倉敷では全国でもいち早く町並み保存の重要性に着目し、行政と住民が一体となって保存活動を行ってきた。その先駆けとなったのが、1948(昭和23)年に開館した倉敷民芸館である。江戸時代後期の米蔵を改装したもので、白壁と黒の貼り瓦のコントラストが美しい。同じく江戸時代の米蔵を改装して1950(昭和25)年に開館した倉敷考古館は、東側の壁一面に施した貼り瓦が特徴の美観地区を象徴する建物。中橋をはさんで、その向かい側に建つ倉敷館は、1917(大正6)年に倉敷町役場として建てられた木造洋風建築。現在は観光案内所と無料休憩所になっており、川舟の乗船券はここで売られている。大原美術館の向かいに建つ「語らい座 大原本邸」は江戸時代後期の1795(寛政7)年から使われていた大原家当主の家で、母屋や蔵など全10棟が重要文化財。その東側に建つ有隣荘は1928(昭和3)年に建てられた大原家の別邸で、緑がかった瓦の色から「緑御殿」ともよばれる。和洋折衷の優美な邸宅で、通常は非公開だが、年に数回、大原美術館主催の特別展で公開される。倉敷川畔では日没後に「夜間景観照明」を実施しており、やさしい灯かりが街並みをライトアップし、日中とは異なる風情が味わえる。
 倉敷川畔から道一本隔てた本町通りは、鶴形山の山裾に続く旧街道筋にあたり、500mにわたって町家が続く。美観地区のなかで最も古い町屋の旧井上家住宅が、10年に及ぶ保存修理工事を終えて2022年秋から公開されている。町家を改装した個性的な商店が並び、ショッピングも楽しい。鶴形山にある阿智神社の石段を上り、境内から倉敷の町を眺めるのもよい。
#

補足情報

*倉敷市は1968(昭和43)年には倉敷市独自の「倉敷市伝統美観保存条例」を制定。翌1969(昭和44)年には倉敷川畔特別美観地区(0.21km2)を指定している。そのうち0.15km2が1979(昭和54)年「重要伝統的建造物群保存地区」に選定。
関連リンク 倉敷市(WEBサイト)
参考文献 倉敷市(WEBサイト)
岡山観光WEB(公益社団法人岡山県観光連盟)(WEBサイト)
倉敷観光WEB(倉敷市)(WEBサイト)
「岡山県の歴史散歩」山川出版社

2024年10月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。