三朝温泉みささおんせん

鳥取県東伯郡三朝町にある三朝(みささ)温泉は皆生(かいけ)温泉と並んで鳥取県を代表する温泉地である。三朝温泉への交通手段は、車では大阪から中国自動車道経由で3時間半、岡山駅から米子自動車道を経由して2時間弱、鉄道利用では山陰本線倉吉駅下車、10km、車で20分弱である。
 開湯は1164(長寛2)年、源義朝の家来であった大久保左馬之祐が三徳山参詣の途上で発見*したと伝えられている。その源泉は三徳川左岸、現在の公衆浴場「株湯」周辺と考えられている。三朝温泉はこの源泉から下流に向かって温泉街が形成され、戦後の高度成長期の団体観光客の増加を受けて、三徳川右岸に近代的な大型旅館が増加した。現在では三徳川両岸に温泉街が形成されている。歴史の古い左岸には小旅館や飲食店・商店が集積しており、石畳が敷かれた温泉本通りには歓楽街として発達した飲食店、土産物屋、射的場等が並び、昭和の風情を残す温泉街となっている。一方、広い河川敷きの対岸となる右岸には大型旅館が建ち並んでいる。また、この河川敷きには河原露天風呂・足湯がある。
 三朝温泉の特徴は全国屈指の含放射能/ナトリウム・塩化物泉*という泉質にある。この泉質はラジウムが分解されて生じる弱い放射線であるラドンを高濃度で含有している。その効用として新陳代謝が活発化して免疫力や自然治癒力が高まる「ホルミシス効果」が生まれる。さらに温泉蒸気の吸飲や飲泉により抗酸化機能が高まり、老化や生活習慣病の予防に役立つ効用がある。なお、泉温は泉源により40℃~85℃と幅がある。
 このような特異な泉質により三朝温泉は病気、怪我からの療養をする温泉地として古くから注目されてきた。1940年代から岡山大学が三朝医療センターを開設して温泉療法*の研究と実践を進めてきた。現在はこの医療センターは閉院しているが、それまでの長い温泉療法の歴史をもとに、三朝温泉病院と旅館の協力による現代湯治が実践されている。現代湯治とは、病院での健康診断に基づいて温泉療法の指示を受け、旅館に長期滞在して温泉入浴や周辺での散策や自然体験、日帰り観光などを行う温泉地の楽しみ方のことである。
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みどころ

三朝温泉の見どころは、大正・昭和の情緒が漂う温泉街の雰囲気、ラドン温泉による様々な温泉療法の体験、そして三徳川の清流と周辺の里山による自然環境である。
 昭和情緒溢れる温泉街を楽しむには温泉本通りを散策すると良い。この通りには湯の街ギャラリーと称して商店や篤志家が様々なコレクションや趣味の作品*を展示している。温泉本通りを上流に向かうと薬師堂の隣に飲泉と足湯のある「薬師の湯」の広場がある。ここで小休止して先に進むと三朝神社がある。樹齢500年の椋(むく)の木や椨(たぶ)の木などの巨木に囲まれた鬱蒼とした境内の中に飲泉場「神の湯」がある。さらに200mほど上流に歩くと楠の古木の根元から源泉が湧いたと伝えられている公衆浴場「株湯」がある。
 様々な温泉療法の体験では三朝温泉病院での診断と指導による入浴プログラム、運動プログラムが挙げられる。なかでも特異なものにラドン熱気浴がある。これは「薬師の湯」の裏にある天然ラドン熱氣浴泉「すーはー温泉」で体験できる。元は岡山大学の温泉療法施設であった地下の浴室を熱気浴室として活用している、予約制の個室である。また、三朝温泉病院では「鉱泥湿布(こうでいしっぷ)」として温泉で温めた泥を湿布に使う療法が行われている。
 三朝温泉の自然を楽しむには中央を流れる三徳川の堤防を散策すると良い。三徳川は三徳山に源流を持ち、カジカカエルの声を聴くことができる清流である。三朝橋のたもとの河原の露天風呂と足湯を出発点に、明るく開放的な河川堤防を歩いて「ふるさと健康村」から「かじか橋」の足湯を経て1、2時間の散策で温泉街を一巡できる。また、周辺部に足を伸ばすと里山と渓谷があり、車で15分ほど行くと三徳山三佛寺の観光ができる。
 なお、三朝温泉に滞在するには、長期滞在に即した保養旅館から観光の拠点となる近代大型旅館、そして風情のある伝統的な旅館まで幅広い選択肢がある。なかでも木屋旅館と旅館大橋は明治・大正・昭和初期の木造の温泉旅館の佇まいを残しており、国の有形登録文化財に認定されている。
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補足情報

*大久保左馬之祐は年老いた白い狼を弓で射ようとしたが思いとどまった。その晩の夢に妙見大菩薩が現れて白狼を助けた御礼に温泉の湧出場所を教えたという伝説がある。同様の温泉発見伝説は全国の温泉地に多く伝わっており、登場する動物は鹿・熊・鷺など多様である。
*放射能泉は温泉法では特殊成分を含む療養泉に分類される。主にラジウム、ラドン及びトロンの原子核崩壊により微量の放射能を持つ。含有成分の種類に応じてラジウム温泉、ラドン温泉、トロン温泉とも称される。日本でラジウム・ラドンの含有量が多い温泉地は三朝温泉の他に、秋田県玉川温泉・新潟県五頭(ごづ)温泉郷・山梨県増富温泉が挙げられる。
*温泉療法とは温泉を入浴・飲用、あるいは蒸気吸入することなどによって体調を調え、傷、疾病などの症状を緩和する自然療法の一つである。 現代の生活習慣病の予防や高齢者の病後のリハビリテーションに活用されている。温泉の利用だけで無く、各種水中運動、ウォーキング等の自然散策、食事療法などと組み合わせて行われている。温泉療法を実践する医師である温泉療法医・温泉療法専門医の認定は日本温泉気候物理医学会が行う。
*写真館ではクラシックカメラ、酒造店では酒蔵、地元の調理師による高野豆腐を加工する調刻の館、カジカガエルの鳴き声が名物の三徳川にちなんだカエル人形館等がある。
関連リンク 三朝温泉観光協会/三朝温泉旅館協同組合(WEBサイト)
参考文献 三朝温泉観光協会/三朝温泉旅館協同組合(WEBサイト)

2024年06月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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