長岳寺ちょうがくじ

JR桜井線(万葉まほろば線)柳本駅から東へ約1.5km。山の辺の道の途中、龍王山(標高585m)の山裾にあり、古い大きな山門を入ると参道がつづく。824(天長元)年、空海の開基と伝えられ、大和神社の神宮寺であったともいわれる。寺が盛んだったころは、愛染堂、御影堂などの堂宇のほか、僧坊が42を数えるほどの大寺であったが、たびたびの兵火と廃仏毀釈で衰えた。しかし、現在も、平安時代後期から桃山時代にかけて建立、造立された庫裏*1、鐘楼門*2、五智堂*3などの建造物や阿弥陀三尊像*4などの仏像などを遺す。境内は広く本堂前には池を配した浄土式庭園があり、本堂東側の小丘には高さ約2mの石仏などが立つ。
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みどころ

山の辺の道から山門を通り抜け生垣に囲まれた屈曲した参道を入ると、やがて石段にかわり、左手に庫裏がみえ、正面に鐘楼門が待つ。鐘楼門をくぐると、龍王山の山裾を取り込んだ緑の豊かな境内を見渡すことができる。右手には浄土式庭園が広がり、左手には阿弥陀三尊が安置された本堂が建つ。ここでは、まず、じっくりと美しい庭園を巡ってみたい。とくに本堂の回廊正面から振り返って見る紅葉期の庭園の景観は絶佳。全国紅葉百選にも選ばれている。本堂内では、量感に溢れ写実的な阿弥陀三尊をぜひ拝観したい。
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補足情報

*1 庫裏:生垣に囲まれた参道を入ると、楼門の手前の左手に庫裏が建つが、これはかつて塔頭のひとつであった地蔵院の庫裏・本堂であったもの(桁行正面3間、背面2間、梁間2間、一重、宝形造、檜皮葺)。建物は室町時代の書院造の様式を残す江戸初期(1630年)の建立。現在は長岳寺の庫裏として利用されている。国指定の重要文化財。
*2 鐘楼門:上階は平安後期、下階は桃山時代の建立。1間1戸楼門、入母屋造、杮葺。
*3 五智堂:寺から1kmほどの西の飛び地に離れて立つ。1間四方、宝形造、本瓦葺、鎌倉時代の建物である。別名真面堂(まめんどう)または傘堂と呼ばれる。国指定の重要文化財。
*4 阿弥陀三尊像:阿弥陀如来坐像・観音菩薩半跏像・勢至菩薩半跏像の三尊仏で、胎内に仁平元年(1151)の墨書銘があり、平安時代後期(藤原時代末期)の作であることが明らかであるが、初めて玉眼を使用している点や、堂々たる重量感などは、次代鎌倉時代への先駆けとみられる。同じ藤原期作の多聞天、増長天ともに国指定の重要文化財。

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