藤ノ木古墳ふじのきこふん

JR関西本線(大和路線)法隆寺駅から北西へ約1.8km、法隆寺の西350mの住宅地にある直径約50m、高さ約9mの大型円墳*1。1985(昭和60)年の発掘調査で、豪華な馬具が出土して注目された。横穴式石室*2で、玄室の奥に未盗堀の朱塗りの刳抜式家形石棺があり、1988(昭和63)年に開棺調査された結果、2体の人骨と、歩揺*3をつけた筒形金銅製品、長大な大刀、大きな金銅製履(靴)、鳥形などの飾りをつけた金銅製冠、ガラス玉などの装身具など多くの副葬品がほぼ原位置を保って発見された。1985(昭和60)年に石棺外から見つかった馬具の鞍金具には象や獅子などの透し彫りがほどこされ、その国際性も注目を集めている。古墳の築造された年代は6世紀後半と考えられ、被葬者については、崇峻天皇をはじめ、穴穂部(あなほべ)皇子、宅部(やかべ)皇子、紀(き)氏、平群(へぐり)氏、膳(かしわで)氏などとする説があるが、確定はしていない。古墳周辺は公園として整備され、石室は入口の扉のガラス窓越しに見学することができる。
 出土品は現在、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館に収蔵され、その一部を展示している。また、藤ノ木古墳から約300m南にある斑鳩文化財センターでは、藤ノ木古墳の石棺や出土品のレプリカを展示し、解説等も行っている。
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みどころ

古墳は住宅地に囲まれるようにあるが、公園としてきれいに整備されている。現地には解説板での案内しかないので、300mほど離れた斑鳩文化財センターにまず立ち寄り、展示室で展示物や解説映像を視聴したあと見学することをお勧めする。車で訪れる場合、古墳周辺には駐車場がないので文化財センターに駐車して、徒歩で古墳に向かう方がよい。なお、斑鳩文化財センターの展示品はレプリカなので、本物の出土品を見たい場合は、橿原神宮近くにある奈良県立橿原考古学研究所附属博物館に出土品の一部が常設展示されているので、少し遠いが訪れるのがよい。
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補足情報

*1 円墳:丸い形をした古墳。現状では墳丘を階段状に積み上げる段築(だんちく)や、墳丘の表面に石を葺く葺石(ふきいし)は確認されていない。墳丘裾部で円筒埴輪の基底部が出土していることから、本来は埴輪を立てていたと推定されている。
*2 横穴式石室:横方向に設けられた石積みの墓室。全長約14mで、そのうち玄室は長さ約5.7m、最大幅約2.7m、高さ約4.2mで、通路部分の羨道は長さ約8.3m、高さ約2.4m。刳抜式家形石棺を安置している。玄室床面には一面に礫が敷き詰められ、床面の下には排水のための石組溝が設けられ、石室外へと延びている。石棺は、奈良県の西に聳える二上山(にじょうざん)で産出する白色凝灰岩が使用され、棺の内外面には朱が塗られていた。
*3 歩揺:歩くなどの動きにつれて、揺れる飾り。藤ノ木古墳では魚・鳥・船などを象ったものが見られ、冠、履、筒形品などにあしらわれている。