伊根の舟屋群いねのふなやぐん

日本海に臨む丹後半島の北東部に位置する伊根町。その町の南端、伊根浦地区では伊根湾に沿って、当地ならではの伝統建築「舟屋」がびっしりと立ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。山陰近畿自動車道の与謝天橋立ICから国道176・178号線で23km、約30分で到達する。
 伊根浦は古くからの漁業集落。江戸時代末期~昭和初期に建てられた舟屋などの伝統的建造物が多数残り、周辺の環境と一体となった漁村の歴史的な景観が評価され、2005(平成17)年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれた。保存地区を構成する伝統的建造物などは460件あり、選定地区の中では奈良県橿原市の今井町に次いで2番目に多い。
 舟屋は文字通り舟を収納する建屋。1階が舟のガレージと作業場になっている。海側の間口は大きく開かれ、床は傾斜しており、容易に舟を出し入れできる。木造船で漁をしていた昔は、舟を海から引き上げ、風雨や虫から守る必要があった。そのための構造である。2階は漁具の置き場、網の干し場として使われたが、現在は居住スペースとなっていることが多い。
 舟屋は海面ぎりぎりに立つが、伊根湾の地形がそれを可能にしている。東・西・北の三方を囲む山によって、日本海側からの風や波が遮られ、また湾口をふさぐように青島があって防波堤の役を果たす。そのため湾内は波が穏やかで、干満差も少ない。
 伊根の舟屋群の景観は、伊根湾沿いの各所から眺められるほか、丹後海陸交通の「伊根湾めぐり遊覧船」や海上タクシーを利用して海から見ることもできる。また舟屋内部をガイドするツアーも開催されている。遊覧船は湾の西部の日出地区に港があり、ガイドツアーなどについては観光協会に問い合わせを。
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みどころ

伊根浦では伊根湾沿いに道が続き、海側に舟屋、道を挟んで山側に主屋や土蔵が立つ。道を歩きながら当地ならではの漁村景観を楽しめ、海側に開けた場所では舟屋を間近に見ることができる。また、町の高台にある「舟屋の里公園(道の駅舟屋の里伊根)」からは伊根湾全体が俯瞰できる。圧巻なのは遊覧船からの眺め。広い範囲にわたって続く統一感のとれた舟屋の家並みに驚かされるとともに感激する。
 伊根湾周辺の海はさまざまな魚介が獲れる好漁場となっており、特に伊根ブリや丹後ぐじ(アカアマダイ)、岩ガキなどはブランド食材として知られる。これらは町内の食事処で味わうことができる。
 海上安全や大漁を願う伊根祭(7月下旬)、若者たちが手漕ぎの祭礼船で競い合う「おべっさん」(8月20日)、伊根花火(8月下旬)、「伊根のうみゃーもん祭」(10月下旬)など、当地で行われる行事も魅力的である。
関連リンク 伊根町観光協会(WEBサイト)
参考文献 伊根町観光協会(WEBサイト)
丹後海陸交通株式会社(WEBサイト)
一般社団法人京都府北部地域連携都市圏振興社(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 下」山川出版社

2025年05月現在

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