鴨川に架かる四条大橋の東詰に立つ、現存する日本最古の歴史を持つ劇場。京阪本線祇園四条駅下車すぐ、阪急京都河原町駅下車徒歩3分と、交通至便な地にある。江戸時代初期、出雲の阿国(いずものおくに)*が「かぶき踊り」を披露するなど、四条河原では踊りや芝居が盛んに行われており、付近に常設の芝居小屋を設けたのが始まりである。7軒ほどあった芝居小屋のうち、明治時代後期以降、南座が当時の名称のまま唯一残った劇場である。1929(昭和4)年の改築で、桃山風の破風造り、鉄筋5階建ての建物に伝統の櫓を構え格式も備わった。現在の建物は、1991(平成3)年と2018(平成30)年に、大規模な改修がされたもの。内部は最新設備を整え、観覧席は1,082席設置されている。1996(平成8)年には国の登録有形文化財に、また、京都市の歴史的意匠建造物にも指定されている。
 南座では、京都の冬の風物詩になっている12月の「吉例顔見世興行」をはじめ、年間を通して様々な作品が上演されている。歌舞伎以外にも歌劇やコンサート、落語など多岐にわたり、伝統的な古典芸能から新たなライブエンタテイメントまで、幅広い文化を国内外へと発信している劇場である。建物の西には、「阿国歌舞伎発祥地」と刻まれた石碑がある。
#

みどころ

師走が近づく11月末頃になると、「吉例顔見世興行」に向けて、勘亭流という書体で歌舞伎俳優の名前などを記した「まねき看板」が南座の正面に設置された青竹組みの矢来の上に1枚ずつ掲げられる。この「まねき上げ」が行われると、京都の師走ムードも本番。顔見世のチケットが手に入らなくても、この「まねき」がかかった南座をひと目見ようと大勢の人が訪れる。
#

補足情報

*出雲の阿国:生没年未詳。1603(慶長8)年、京都で初めて「かぶき踊り」を演じた歌舞伎の始祖といわれる。出雲大社に仕える巫女であったが、勧進のため諸国を巡り踊るうちに京都で評判となり、四条河原や北野神社などで踊りを披露したという。