なんといっても大松明を担いだ青年たちが火の粉をかぶりながら徐々に数を増やして進み、「サイレイ、サイリョウ」と大声で繰り返して囃しながら練り歩く迫力が、この祭りの最大の見どころである。青年たちは上半身裸で肩当だけをまとい、下半身は力士のような黒い締め込みと下がりをつけ、足回りは黒の脚絆と草鞋の姿が勇ましい。午後8時頃には山門前の石段に集まった松明は300本あまり、燃え盛る炎が闇に向かって噴き上げるとともに、松明から降りかかる火の粉に耐えながら、もみ合う姿に感動を覚える。火の粉の勢いと体にかかる熱さを鎮めるため、水鉄砲のような噴霧器を担いで回る消防の人たちも必死である。特に風の強い天候の際＊には松明を倒すまいとする若者たちが苦労する。
　この後に行われる神輿渡御で若者たちが担いだ2基の神輿が石段を駆け降りる姿も勇ましい。急な参道を降りるため、神輿にはブレーキ役として若い女性たちが神輿の後ろから引き綱を引く。この綱を引くと安産のご利益があるという。また神輿の先端には若者2人が体を逆さにし逆大の字に足を広げてぶら下がる。『チョッペンの儀』といい、鞍馬での成人式の名残だとされている。
　日が変わり、翌日午前中に2基の神輿が、御旅所から本殿へ帰る還幸祭を執り納め、鞍馬の火祭は終了する。