毎年5月15日に行われる上賀茂・下鴨両神社の例祭。正式名を賀茂祭というが、祭りの際、内裏宸殿の御簾や牛車、衣冠などに二葉葵を飾ることから葵祭と呼ばれる。祭りは路頭の儀・社頭の儀からなる。路頭の儀は、平安時代の風俗そのままの優雅な装束を着けた約500人と馬36頭、牛4頭、牛車2車、風流傘10基からなり、行列が延々約1kmにも及び、さながら一幅の絵巻物の世界が展開する。
　欽明天皇のころ（539～571年）、風雨が続き、五穀が実らなかったため、当時賀茂の大神の崇敬者だった卜部伊吉若日子を勅使として祭礼を行い、駆競（かけくらべ）などを催した。すると風雨がおさまり、五穀も豊かに実って国民も安泰になった。この行事が葵祭のルーツとされている。819（弘仁10）年には、律令制度で最も重要な恒例祭祀に準じて行う国家的な行事となった。もっとも盛大だったのは平安時代。当時、行列を見る見物人や牛車が沿道を埋めつくし、「祭」と言えば葵祭をさすほど有名で、「枕草子」＊や「源氏物語」＊といった文学作品にも登場する。鎌倉・室町時代は戦乱が続き、朝廷の力が弱まったこともあって、葵祭は衰退する。江戸時代、1694（元禄7）年、徳川幕府の支援によって復活。葵祭と呼ばれるのはこのころから。明治維新で一時中断されていたが、1884（明治17）年から5月15日を祭日と定め、葵祭は再興された。第二次大戦でまたも路頭の儀が中止となったが1953（昭和28）年に復活、1956（昭和31）年からは、「斎王代（さいおうだい）」を中心にした女人列を行列に加えた。