平安神宮へいあんじんぐう

岡崎公園*を南北に貫く神宮道は、平安神宮の参道にあたる。冷泉通から正門の神門*(応天門)をくぐると、広い前庭の向うに大極殿*の優美な姿が望まれる。平安神宮は、1895(明治28)年、平安遷都1100年を記念して創建され、桓武天皇を祀り、市民の総社としたものである。1940(昭和15)年10月には、孝明天皇の神霊も合祀している。
 社殿は、平安京大内裏朝堂院の形式を模したもので、それぞれ本来の5/8の規模で復元されている。大極殿の左右に歩廊でつながれた蒼龍楼・白虎楼*を配し、すべての社殿は平安京になぞらえて、碧瓦、緑青の連子窓、丹塗りの建造物である。大極殿の前面には、龍尾壇も設置されている。応天門の南の神宮道に立つ丹塗りの大鳥居は、高さ約24mと巨大で人目を引く。社殿の周囲をめぐる広い神苑*は、東山を借景として、白虎池・蒼龍池・栖鳳池の3つの池を配する池泉回遊式庭園で、小川治兵衛*の作。シダレザクラやカキツバタ、フジの名所となっている。当神宮の祭礼である時代祭は、平安京遷都の日にちなむ毎年10月22日に開催される。
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みどころ

晴れた日、大鳥居と大極殿をはじめとする丹塗りの建物が、まばゆいばかりに輝く。拝殿で参拝した後、総面積約3万3,000m2の広大な池泉回遊式庭園である神苑を訪れてほしい。明治の作庭家7代目小川治兵衛らの手になるもので、1975(昭和50)年に国の名勝に指定された。
 入口の門をくぐると南神苑。ベニシダレザクラがおおう。平安の苑には、平安時代の書物に登場する200種余りの植物が植えられている。6月上旬から下旬には、白虎池には日本古来の品種で200種、2,000株のハナショウブが咲きほこる。花を楽しむために新たに「八つ橋」が架かる。周囲を林に囲まれている西神苑から中神苑へ進むと、蒼龍池が広がり、珊瑚島へ右へ左へと進む楽しい飛び石の臥龍橋が待っている。円柱の飛び石は三条大橋と五条大橋の橋脚を使用している。蒼龍池には5月上旬から下旬にかけてカキツバタ約1,000種が彩る。秋にはモミジが映える。東神苑、栖鳳池に建つ尚美館や泰平閣(橋殿)越しに東山連山の一つ華頂山を借景に大きな眺めが広がる。このように、神苑は花、池、建物が一体となった美しさがあり、のびやかな気分を与えてくれる。
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補足情報

*岡崎公園:1895(明治28)年に開催された第4回内国勧業博覧会の敷地跡を整備された公園で、京都市京セラ美術館や京都国立近代美術館など多くの文教施設がある。2015(平成27)年に南禅寺界隈を含め重要文化的景観に選定された。
*神門:応天門ともいう。平安神宮の正門の2層楼門で、勾欄を設けた丹塗りの華麗な建造物である。
*大極殿:外拝殿である。応天門の真北、本殿・内拝殿の南側にある。寝殿造の構造で正面30mと大きく、入母屋造の屋根は碧瓦を葺き、棟の両端には金色の鴟尾(しび)を置いている。前庭左右に「左近の楼」「右近の橘」が配置され、さらに前庭には龍尾壇という勾欄が設けられ上下に仕切られている。
*蒼龍楼・白虎楼:拝殿左右の歩廊端にある楼閣で、東を蒼龍楼、西を白虎楼と呼ぶ。いずれも碧瓦本瓦葺、丹塗で、棟の両端に鴟尾を置いている。
*神苑:社殿を囲む約3万3,000m2の広さの回遊式庭園。東・中・西・南苑の4つに分かれ、それぞれ趣を異にしている。西・中苑は、神宮創立の際の小川治兵衛の作庭で、東苑は大正時代に造られたもの。苑内には多くのサクラ・ハナショウブ・スイレン・ハギ・カエデが植えられ、四季折々に美しい。西苑の臥龍橋は、三条大橋と五条大橋で不要になった橋脚を持ってきて飛び石としたもの。東苑は東山を借景に橋殿があり、シダレザクラの開花時がよい。神苑入口には、日本最古の電車が保存されている。
*小川治兵衛:7代目。明治から大正時代に活躍した、近代日本庭園の先駆者といわれる作庭家。平安神宮神苑のほかに、無鄰菴、仁和寺庭園、東京の旧古河庭園などが代表的な庭園である。
関連リンク 平安神宮(WEBサイト)
参考文献 平安神宮(WEBサイト)
「京都府の歴史散歩 中」山川出版社

2025年05月現在

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