豊受大神宮(外宮)とようけだいじんぐう(げぐう)

外宮(豊受大神宮)は、内宮・天照大御神の食事を司る神様(御饌都神)として、1500年ほど前の雄略天皇22年、伊勢の地に招かれた。すべての産業と衣食住の神様、豊受大神宮を祀る正宮を中心に約0.89km2の宮域が展開されている。
 外宮とは、かつて離宮のことを「外」といったため、「天照大御神の離宮」を表す意味であり、正宮のほか4つの別宮があり、宮域内に多賀宮、土宮、風宮の3宮、宮域外に月夜見宮がある。さらに外宮摂社16社、外宮末社8社、外宮所管社4社が所属している。
 伊勢神宮の祭典は、「外宮先祭(げくうせんさい)」といい、まずは外宮から始めるが、式年遷宮に関するお祭りは内宮を先とする習わしがある。 
 また食の神様であることから、毎日2回、日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)が約1500年間、続けられている。朝大御饌、夕大御饌が外宮御饌殿において行われる。
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みどころ

参拝の順路は、表参道から火除橋を渡り、清盛楠*、手水舎、せんぐう館、勾玉池*…第一鳥居…斎館*…第二鳥居…正宮*、そして多賀宮、土宮、風宮の3つの別宮参拝後、四至神*…五丈殿*、九丈殿*…神楽殿*…忌火屋殿*…北御門口を出て月夜見宮と回ってほぼ2時間程度である。
 正宮は外宮の中心で、板垣・外玉垣(とのたまがき)・内玉垣(うちたまがき)・瑞垣(みずがき)の4重の垣の中に正殿が立つ。東隣に古殿地があり、前面には勾玉池から延びる御池がある。祭典は内玉垣南御門前の、白石や清石が敷かれた中重(なかのえ)と呼ばれる広場で行われる。一般参拝は外玉垣南御門の御幌(幕)の前で行う。
 外宮は伊勢神宮のいわば玄関口であり、式年遷宮の概要や歴史を分かりやすく紹介する「せんぐう館」は秀逸で、新しい見どころの一つでとなっている。
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補足情報

*清盛楠:手水舎反対側にある高さ10m、目通り3mあまり、樹齢800年の楠。平清盛が参向した折り、冠にあたった枝を切らせたと伝える。
*勾玉池:衛士表見張所の南東、神苑にある勾玉型の池である。1889(明治22)年に造られたもので、ハナショウブが美しい。中秋の名月には観月会が催される。
*斎館:第一鳥居の先、右側の門内にある。日常は宿衛員の参籠・斎居に用いられているが、祭典のときは祭主はじめ大宮司以下の神職が参籠・潔斎する。この横に天皇・皇后の参拝、および勅使参向の際に使われる行在所(あんざいしょ)がある。
*正宮:・正殿(しょうでん):瑞垣の内に鎮座する唯一神明造の神殿である。内宮とほぼ同じで、正面10.2m、側面5.8m、高さ10.2m、床の高さは2.3mである。千木は切口が垂直になる外削(そとそぎ)で、9本の鰹木を置き、床下には心御柱(しんのみはしら)がある。心御柱は大神が天降るといわれるもっとも神聖な柱で、正殿そのものは宝物である鏡を納める宝庫であったともいわれる。垣の奥深くに立つため全容を拝することはできないが、外玉垣南御門脇からその一部が望まれる。
・四丈殿:中重の東側にある萱葺、切妻造の建築である。古くは祭儀の折り斎王が使用したため、斎王候殿とも称したが、現在は幣帛点検の儀式や、雨天のとき中重での行事を行う。また遷宮の際には御装束神宝の読合(とくごう)をする。読合とは、式年造営庁から神宮祭主へ提出された送文と現物の照合のこと。
・東宝殿:正殿の南東にあり、北面して立つ神明造の社殿である。幣帛・神御衣(かんみそ)などを納める。
・西宝殿:正殿の南西、東宝殿と対称の地に立ち、古神宝類や御鞍などを納める。
・御饌殿:正宮の板垣内側、北東隅にある外宮独特の社殿である。板校倉造で、刻御階(きざみぎょかい)を設け、扉は南北両面にある。鎮座以来、天照大神・豊受大神および豊受大神の相殿(あいどの)神に毎日大御饌を奉った社殿で、明治以降は皇大神宮相殿神と両宮の別宮の神座も加えられた。
・外幣殿(げへいでん):正宮の北西隅、御饌殿の反対側にあり、外幣帛殿ともいう。古くは幣帛を収めていたが、現在は古神宝の類を収蔵している。
*四至神(みやのめぐりのかみ):神楽殿の西、大庭(おおば)と呼ばれる小石の敷かれた広場の南東隅の榊の根元に石を据えた場所がある。外宮の周囲を守る神を祭る。大庭は奉幣の前後の儀式が行われる式場であった。今も遷宮の折りには祭儀が執行される。
*五丈殿:九丈殿の北に南面して立ち、直会殿(なおらいでん)ともいわれた。もとは勅使や禰宜の直会所であった。雨天の際、お祓いをするところで、遷宮祭には直会の饗膳が行われる。
*九丈殿:大庭にある。西面して立つ切妻の板葺屋根で壁はない。外宮の摂社・末社、所管社を遥拝するところで、当初長さが9丈あったためこう呼ばれる。もとは勅使の従者などの直会所、つまり祭儀のあとで、神饌神酒の下げた物を飲食する建物であった。内宮では中絶してない。
*神楽殿:二ノ鳥居の先、参道右手にある入母屋造の建物。参拝者が報謝や祈願のため神饌を供し、神楽を奉納する所である。つづきに、大麻(お札)やお守・暦などを授ける大麻授与所がある。神楽殿で奏される神楽は、倭舞・人長舞のほか千年の伝統をもつ古典芸能の舞楽数十種のうちから奏される。
*忌火屋殿(いんびやでん):裏参道の西側にある切妻造、板葺の建物である。前夜から参篭した神職が火鑚具で火を起こし、この忌火を用いて御飯を炊き、神饌を調理する。
*御酒殿(みさかでん):忌火屋殿の西にあり、もとは神に供する酒を造る殿舎であった。現在は御酒殿神を祭り、神酒を奉納している。
関連リンク 神宮 ISEJINGU(神宮司庁)(WEBサイト)
参考文献 神宮 ISEJINGU(神宮司庁)(WEBサイト)
「伊勢神宮のこころ、式年遷宮の意味」小堀邦夫 淡交社
「永遠の聖地 伊勢神宮」千種清美 ウェッジ
「伊勢神宮-式年遷宮と125社をめぐる旅』太陽の地図帖 平凡社
「伊勢神宮ひとり歩き」中野晴生/中村葉子 ポプラ社

2024年08月現在

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