大杉谷おおすぎだに

JR紀勢本線「三瀬谷駅」から町営バスで63分、終点「大杉」下車。大杉谷は、三重県多気郡大台町の宮川上流、吉野熊野国立公園内にある渓谷であり、国の天然記念物(天然保護区域)に指定されている。 2016(平成28)年3月にはユネスコの生物圏保護区「大台ヶ原・大峯山」が拡張され、大杉谷もその一部となった。同時にユネスコエコパークの登録名称も「大台ヶ原・大峯山・大杉谷」に変更された。
 台高山脈の主峰日出ヶ岳の東側に深く切れ込んだV字の谷で、北アルプスの黒部峡谷に匹敵するといわれる渓谷美を誇っている。大台ヶ原の水を集めた流れは宮川ダムまで山肌を削って一気に流れ下るが、大日嵓(だいにちぐら)から上流の堂倉滝まで約15kmが峡谷の主要部でその中心の不動谷合流点には桃ノ木山の家がある。この谷の特徴は深い原生林の美しさと滝の多いことで、上流から堂倉滝・七ツ釜滝・ニコニコ滝・千尋の滝などの大きな滝が次々と現われる。
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みどころ

大杉谷登山道*を中心とした大杉谷の適正利用に関するマネジメント組織の必要性は再三指摘されてきたが、1982(昭和57)年の社団法人大杉谷登山センター設置から、2014(平成26)年には公益社団法人となり、2016(平成28)年には大台ヶ原・大峰山・大杉谷ユネスコエコパーク核心地域として再登録されたこともあり、組織体制の充実が図られてきた。
 近年では美しい大杉谷を後世に残すため「大杉谷入山協力金」として原則一人1,000円の徴収を開始している。また「秘境 大杉谷」寄付金、具体的には大杉谷登山道の環境保全と安全登山にかかわる保守管理のためにかかる費用を寄付金として広く募集するに至っている。
 日本三大渓谷のひとつ「大杉谷」。その美しい自然を守り、事故のない安心安全な登山歩道の維持のための取り組みが今注目されている。
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補足情報

*大杉谷登山道:渓谷に沿ってそそり立つ岩壁を削り、吊橋で結んだ登山道が大台ヶ原まで付けられ、中級以上の登山コースとして人気がある。新緑、紅葉が美しく、5・6月にはシャクナゲが開花して彩をそえる。なお、崩壊していた堂倉滝付近の吊橋も架け替えられ、歩道も整備された。