桜えびの料理さくらえびのりょうり

由比港は、東海道本線、国道1号線、東名高速道路などの大動脈が、北側から迫る山と南側の駿河湾に挟まれた狭隘な海岸線に集まるところに、ひっそりとある。駿河湾でしかとれない桜えび*1の存在は、江戸時代*2から知られていたものの、桜えび漁*3が広まったのは、1894(明治27)年に2艘一組でアジの網引き漁をしていた際に、偶然、網が深く入り大量の桜えびが獲れたことに始まる。これを契機に由比港での桜えび漁が盛んになった。近年、桜えびが減少傾向あるため、漁期は資源保護の観点から3月下旬~6月初旬、10月下旬~12月下旬の年2回、夕方に出漁し夜半に桜えびが浮上してくる習性に合わせ、水揚げをしている。現在、駿河湾に面した蒲原、大井川漁港を含め、桜えび漁の許可を受けている漁船*4は118艘で、2艘一組で行う漁法は受け継がれているが、船や網の近代化は格段に図られている。
また、由比漁協が中心となって「駿河湾産由比の桜えび」としてブランド化にも努めている。かつては「天日干し」した桜えびを各種料理のトッピングとして用いることが主流であったが、現在は、生の桜えびを使った生桜えび丼やかき揚げなどが人気を集めている。JR東海道本線由比駅前の旧東海道にある「由比桜えび通り」や、そこから東京方面へ、由比港内にある漁港直営「浜のかきあげや」の間には、桜えびやシラスをはじめとした海産物の土産物屋や料亭、食事処が点在する。
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みどころ

桜えびの定番料理はサクサクのかき揚げであり、いまでは冷凍生桜えびも手に入るようになったものの、生桜えび丼と合わせ、潮の香がいっぱいの由比港で食べたいもの。
 また、お土産には天日干しの桜えびも手に入れたいが、この天日干しの光景も一見に値する。漁期中、水揚げがあって天気が良い日には富士川河川敷に干され、周囲の山々の緑、富士山の雪の白さに、桜えびのピンクが映える。天日干しの実施は水揚げや天候に左右されるが、見学することができる。由比港漁協へ事前確認を。
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補足情報

*1 桜えび:エビやカニと同類の甲殻綱サクラエビ科。似ていると言われるオキアミはプランクトンの一種で軟甲綱オキアミ科。
*2 江戸時代:江戸後期の『駿国雑志』では「當國 、鰶(このしろ)を喰ふ者少し、故に多く鯵を鮓(すし)にする。府市鮓に製る物、鯵及び平目、鯖の類也。長門鮓は蝦等(桜えびのこと言われている)を用ゆ。異壤鮓 (ごもくすし)也」として、いわゆる五目寿司に用いていたとされる。                                                                
*3 桜えび漁:1914(大正3)年の『庵原郡由比町誌』によると桜えび網操船の漁船が68艘あったという。当時は年間を通じ月の出ない暗夜に漁が行われていた。神戸、横浜へ輸出用として、他は東京など国内に向け天日干しエビなどにして出荷していた。 
*4 許可を受けている漁船:近年、桜えびの漁獲量が減少しているため、由比(46艘)、蒲原(36艘)、大井川(36艘)の漁港に所属している桜えび漁師で構成される「静岡県桜えび漁業組合」が、漁期・漁獲量、販売・収益などのプール管理を行い、漁獲量確保と水産資源の保護にあたっている。