城ヶ崎海岸じょうがさきかいがん

伊豆半島の東海岸、半島の付け根にあたる熱海から国道135号線で南へ約35km、北は富戸(ふと)集落の払(はらい)から南は八幡野集落まで、全長約9kmの海岸をいう。約4000年前に大室山が噴火した際、東南及び南に流出した溶岩流によって溶岩台地が生成され、相模灘に向けて舌状に突き出した小半島が形成された。その先端部の溶岩崖は、波の浸食を受け数十mの絶壁が続く海岸線を形造り、変化に富んだ海景を展開している。
 一帯では、6月にアジサイ、7月にはハマカンゾウやスカシユリ、秋にはイソギクやツワブキなど四季折々の草花を見ることができる。                                                  
 起伏に富む海岸線には、富戸にあるぼら納屋*1、門脇吊り橋、門脇埼灯台、まないた岩、橋立吊り橋、大淀小淀などの見どころが点在している。これらを結んでピクニカルコースと自然研究路の2つのハイキングコース*2も整備されている。みどころへは伊豆急行線富戸、城ケ崎海岸、伊豆高原の各駅から徒歩でアクセスできるほか、路線バスの便もある。
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みどころ

溶岩流が海に流れ込み出来上がった海岸線だけに、ダイナミックで変化に富んでいる。その景観をもっとも手軽に楽しめるのは、門脇埼や門脇吊り橋だ。また、門脇埼灯台近くにある展望台からは、伊豆七島や天城連山を望むことができる。
 ハイキングコースは北から南に向かい2コースあるが、門脇吊り橋もあるピクニカルコースは、家族連れでも気軽に楽しむことができるコース。さらに海岸沿いに南に下る自然研究路は多少起伏があり健脚向きだが、城ケ崎海岸の海景をたっぷり楽しめる。コースの途中に水原秋櫻子の「磯魚の笠子もあかし山椿」の句碑もある。    
 城ケ崎海岸の断崖や吊り橋などは、その海景の美しさと荒々しさからテレビのサスペンスドラマのロケ地としてよく利用されている。小説でも大江健三郎の『人生の親戚』では、悲劇的な事件がこの海岸の断崖で起こり、ストーリー展開の起点となっている。小説の中では「あのあたりは典型的なリヤス式海岸で、崖になった岩鼻は、ノコギリの歯状に隣りの岩鼻と相接」しているなどと、城ケ崎海岸の景観を描写している。
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補足情報

*1 ぼら納屋:1626(寛永3)年に紀伊徳川家が建築したのが始まりで、現在の建物は近年復元したもの。紀州より伝わったぼら漁を操業するため、ボラが回遊する春と秋に漁師が住み込んでいた。ホラ貝や旗を合図に出漁し、獲ったボラを江戸城に献上したという。現在は活魚料理、磯物魚介料理を提供する観光施設となっている。なお、近くの海岸には、昭和30年代まで使用されていたボラ漁の見張り小屋、魚見小屋が現存している。                                                                     
*2 ハイキングコース:ピクニカルコース=富戸から伊豆海洋公園バス停まで約3km。ボラ納屋を起点に江川太郎左衛門砲台跡、高さ23mの絶壁に架かる長さ48mの門脇吊り橋、門脇埼燈台、ヒメユズリハの群落や江戸城石切場跡などの史跡がある。自然研究路=海洋公園バス停の南にある日蓮ゆかりの蓮着寺から八幡野港間の約6km。高さ18m、長さ60mの橋立吊り橋、大淀小淀など柱状節理の断崖と大小の岬の海景美を楽しむことができる。

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