浜岡砂丘はまおかさきゅう

御前崎から天竜川の河口まで約30kmにおよぶ遠州灘沿いの海岸線は南遠大砂丘と呼ばれ、そのなかで代表的な砂丘の1つが浜岡砂丘である。この砂丘ができたのは今から3,000~4,000年前、天竜川から吐き出されたおびただしい流砂が遠州灘の荒波によって運ばれ、さらに強い季節風によって陸地に吹き上げられたためという。
 砂の色は白に近く、砂の粒子は極めて細かいため風紋*1が生じやすい。ただ、近年、天竜川からの砂の供給が減り、砂丘の規模は減少傾向にある。砂丘の入口にある白砂公園*2には、遠州灘や砂丘を眺望する見晴らし広場があり、砂地の動植物の観察もできる。周辺には河津ザクラも植えられている。
 公園の先、松林を抜けるとに砂丘が海岸にそって100~200mほどの幅で数キロにわたり続いている。
 現在、南遠大砂丘の地域では、メロン・イチゴ・トマト・人参などが大々的に栽培されているため、いわゆる砂丘らしい風景*3が展開するのは、この浜岡砂丘と御前崎市に隣接する掛川市の千浜砂丘と呼ばれている一帯となる。
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みどころ

南遠大砂丘は白い砂浜とクロマツ林からなる、まさに白砂青松の景観。白砂は天竜川の上流に分布する石英を多く含んだ花崗岩類が細かく砕かれて運ばれたためであり、緑のクロマツ林はこの地域の住民が砂防林として営々と育成してきた人工林である。自然と人工が織りなす景観の妙だ。
 風紋は、その砂の白さと粒子の極め細かさによって生み出される、繊細で神秘的な縞模様。川と波と砂、そして風による自然の造形美である。
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補足情報

*1 風紋:遠州灘沿岸は、10月から4月にかけて偏西風が吹き、浜岡砂丘では遮るものがないため、堆積した砂丘に風紋と呼ばれる波状の縞模様(漣痕)が形成される。 
*2 白砂公園:JR東海道本線菊川駅から南へ約17km。菊川駅と掛川駅からバス便がある。5月〜8月にはハマヒルガオ、コウボウムギ、イワダレソウなどの海浜植物を観察することができる。また、砂丘への入口近くには遠州七不思議のひとつ「波小僧」の像も立つ。「波小僧」は天候の変わり目に突然鳴り出す海鳴り現象を指すが、静岡県西部の海岸部で多種多様な内容の伝説が残されている。                                                                                *3 砂丘らしい風景:浜岡砂丘はいわゆる砂丘らしい風景ではあるが、後背地の耕作地や人家に対する飛砂の被害を減らすことを目的に、明治時代から「人工斜め砂丘」という方法によって砂丘本体の大規模な固定化事業が行われてきた。このため、砂丘景観としては浜岡独特なものがある。「人工斜め砂丘」による固定化とは、15~20mの高さの自然の砂丘は極めて移動性があり海岸線に対し直角方向に並ぶ特性があるため、斜め45度に「堆砂垣」を立て、西風で流される砂をその垣に堆積させ、堆積が進むとさらに「堆砂垣」を立てて堆積させることを繰り返すことにより、海岸線に対し斜めの砂丘を形成させ、地表の砂風がこれにより方向を変え後背地への侵入を減少させるというものである。