柿田川の湧水かきたがわのゆうすい

JR東海道本線・東海道新幹線三島駅から南西に約2.5kmの場所に柿田川の湧水群がある。周囲は柿田川公園*1として整備されている。狩野川の支流柿田川は全長1.2kmで、富士山周辺に降った雨や雪が11000~8000年前の富士山噴火により流出した三島溶岩流の中を通り、この地で湧出した水源によって形成されている清流である。地質鉱物が学術上貴重であることから、柿田川のほぼ全域が国の天然記念物として認定されている。
 柿田川の湧水群周辺の公園では遊歩道が整備され、第1・第2展望台などから年中変わることなく水が湧き出る大小数十箇所の「わき間」を見ることができ、湧水広場では湧水に触れて冷たさも体感できる。また、園内を下流方面に行くと、散策路が整備されており、木製八つ橋が架けられ、通称「舟付場」ではかつて製紙工場で使用された井戸跡からの湧水(湧き間)や、狩野川に向かってゆったりと流れていく柿田川を見ることもできる。
 清流で生活する動植物も豊富で、カワセミ*2の魚を捕らえようとするホバリングや、10月下旬~12月にかけて遡上してくるアユ、アオハダトンボ*3、ミシマバイカモ(三島梅花藻)*4などの観察も可能だ。
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みどころ

柿田川は非常に豊富な湧水群を水源とする川で、富士山周辺に降った雨や雪が地下に浸み込み、26~28年かけてこの地に湧き出るといわれ、その自然のサイクルに驚かされるとともに、湧水量の多さにも圧倒される。湧水は透明度がどこまでも高く、湧水噴出によって噴き上がる砂が織りなす模様と、その砂と日光が創り出す水の青さもまた幻想的である。
 公園内は散策路、木道も整備されており、水生植物や動物の観察、湧水利用の遺構なども見学しながら、柿田川の清らかな流れの眺望も楽しめる。
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補足情報

*1 柿田川公園:公園内の東側、柿田川の東岸のほとんどがかつての泉頭(いずみがしら)城跡である。小田原北条氏が弘治年間(1555~1558 年)に築城したといわれる。『駿府記』によると、1615(元和元)年に徳川家康は「三島御、近所泉頭爲勝地之間、御隠居可被成之旨仰出、來春御隠居云々」として、この地に隠居所を設けるために視察し「泉頭御隠居珍重思召之旨」であり、隠居所の普請を指示したという。しかしながら、翌年、家康は逝去したため、普請は沙汰止みとなった。現在は公園内に曲輪跡などが遺るのみ。                               
*2 カワセミ:清水町の町の鳥として制定されている。頭は暗緑色に青い小斑点、体は青緑色とオレンジ色。渓流の翡翠(ヒスイ)とも称される。                                                                        
*3 アオハダトンボ:清流に棲息。オスメスともに青藍色を帯びた金属光沢が美しく、メスは翅の先に白い点がある。5月初旬から7月末ころまで見られる。準絶滅危惧種。                                                                   
*4 ミシマバイカモ(三島梅花藻):柿田川を代表する植物の一つで砂地に根を下ろす。淡黄色の花が梅の花に似ていることからこの名が付いた。汚染に敏感で、柿田川でも中・上流部にしか生息していない。開花期は、5月~9月頃だが、場所によっては四季を通じて咲く。