稲取温泉いなとりおんせん

伊豆急行線伊豆稲取駅の南、相模湾にせり出す稲取岬に1956(昭和31)年に湧出した温泉。伊東と下田のほぼ中間にあたり、伊豆最大の漁港である稲取港*1を中心に、古くから伊豆東海岸の交通・経済の要地として栄えた。
 1961(昭和36)年に伊豆急行線が開通し、首都圏などからの交通の便が改善されると、一挙に温泉地としても知られるようになった。現在は稲取岬の南岸に沿って20数軒の旅館・ホテルなどが建ち並び、温泉リゾートとして、また、稲取港で水揚げされた魚の磯料理を提供して、多くの宿泊客を集めている。
 街中には足湯が2か所ある。泉質は硫酸塩泉。毎年1月下旬から3月末にかけて伝統行事「雛のつるし飾りまつり」*2が開催される。
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みどころ

相模湾や伊豆大島をはじめとする伊豆諸島を眺望する展望大浴場や露天風呂を備えている旅館・ホテルが多く、雄大なオーシャンビューを楽しみながら温泉を満喫できる。町なかは活気に満ちた漁村情緒ものこしている。
 港に水揚げされたばかりの新鮮な魚介類がこの温泉場の最大の魅力で、魚市場に隣接して稲取漁協直売所もある。とくに、稲取漁港はキンメダイの漁獲量が多いことから、新鮮なキンメダイを用いた料理を旅館、民宿、食事処で味わうことができる。
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補足情報

*1 稲取港:江戸後期に編纂され明治期に増訂された「豆州志稿」では、「慶長(16世紀末)ノ初メ今川氏此ニ居リテ兵糧ノ爲ニ舩ヲ川津濵ニ遣ハシ刈稲ヲ爲サシメ取リ来リシヨリ稲取ト稱スト云」と稲取の名の由来を記している。当地の物産としては、稲などの陸の産物以外に「石決明(アワビ、トコブシの貝殻から作る漢方薬)、烏賊、榮螺、海老、底魚類(キンメダイ等)ト、今、天草ノ出額尤モ多シ」としており、海産物は船で江戸にも送られていたという。また、近世においては、伊豆大川や稲取から切り出された大石は石垣など築城に向いていたため、江戸城や駿府城の築城にあたっては、稲取港が搬出港となった。現在も最盛期には程遠いが、沿岸漁業を中心に漁港としての役割を果たしている。なお、伊豆大島、熱海への定期船は季節運航なので事前に運航状況の確認が必要だ。
*2 「雛のつるし飾りまつり」:つるし飾りの習慣は全国各地にあるが、とりわけ当地、稲取の「雛のつるし飾り」、山形酒田の「傘福」、福岡柳川「さげもん」などが「日本三大つるし飾り」と言われて全国に知られている。各地とも江戸時代からの伝統とされ、無病息災、子孫繁栄などを祈念して飾り付ける。稲取では、雛壇の両脇にモモ、三角、サルなど縁起の良い形をした、色鮮やかな可愛らしい縫いぐるみをつるして飾りにする。「雛のつるし飾りまつり」の期間中は「文化公園」、「雛の館」、「むかい庵」など数箇所で多数展示される。「雛の館」では端午の節句の時期や秋期にも展示公開される。
関連リンク 東伊豆町(WEBサイト)
参考文献 東伊豆町(WEBサイト)
稲取温泉旅館協同組合(WEBサイト)
海の東海道(社団法人静岡県建築士会)(WEBサイト)

2023年11月現在

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