南伊豆の海岸(石廊崎~波勝崎)みなみいずのかいがん(いろうざき~はがちざき)

伊豆急行線伊豆急下田駅から国道136号線、県道16号を経て南西へ18kmほどのところに石廊崎がある。その石廊崎から波勝崎までの海岸線は、多数の岩脈の上に海底火山から噴出した溶岩や火山灰などの火山性堆積物が地層を形成し、さらには陸上側の火山が載る形となっているため、複雑多様な地質・地形となっている。それを太平洋の波浪が浸食したため奇岩・奇勝が創り出されている。
 石廊崎は伊豆半島最南端の岬で、海底火山から噴出した溶岩が暗黒色の絶壁を作り、相模灘と遠洲灘を東西に二分している。岬に立てば、東に蓑掛岩の奇岩、南東の沖合10kmの海上に神子元島(みこもとじま)、さらに遠く一線上に伊豆七島の大島・新島・三宅島・御蔵島を望むことができる。高さ約60mの岬の台地には白亜の石廊埼灯台*1と測候所が立ち、灯台下の絶壁の窪みには船乗りの守り神として信仰を集める石室(いろう)神社が祀られている。また、南伊豆町ジオパークビジターセンターもあり、岬の東の石廊崎港からは石廊崎探勝の遊覧船*2も出ている。石廊崎の西につづく奥石廊崎と呼ばれる海岸一帯も絶壁と岩礁が連なり、愛逢(あいあい)岬附近では石廊崎と同様の海食崖を見ることができる。
 また、伊豆の西南端に突出する波勝崎は、高さ260mに及ぶ断崖の赤壁、海食洞の千貫門などの名勝がある。波勝崎には300匹ほどの野猿が棲息しており、その一部の集団をみることができる公園(有料)もあるが、海岸線沿いの遊歩道は現在、崩壊しているため立ち入り禁止となっている。
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みどころ

足下に砕ける太平洋の怒涛がそそり立つ大絶壁をつくり、海食洞を穿ち、迫力ある海洋風景を展開している。また、複雑に入り組んだ海岸線は、地質学的にも興味深い岩礁、岩屋、海食崖が数多く見られ、変化に富んだ海景を生み出している。もっともよい展望地は、石廊崎と中木の中間、奥石廊崎と呼ばれる愛逢(あいあい)岬で、展望台、駐車場、売店がある。
 遊歩道も整備されている。長津呂遊歩道は、石廊崎港から石廊崎、奥石廊崎を経て池の原を抜け中木へ向かう4.7kmのコース、南伊豆歩道*3は、富戸ノ浜から吉田方面の展望が良く、入間の千畳敷にも立ち寄れる妻良港までの5.1kmのコース、波勝崎歩道*4は、波勝崎から標高519mの高通山を経て雲見までの5.8kmのコース。すべりやいところもあるので足回りはしっかりとした準備が必要だ。
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補足情報

*1 石廊埼灯台:1871(明治4)年、英国人ブラントンによって建設された灯台。石廊崎の沖合10kmにある神子元島灯台との誤認をさけるために、建設当時は珍しい木造八角形、不動赤光であった。現在の灯台は1933(昭和8)年改築した白色円形コンクリート造、高さは9m、灯質は閃白光。ブラントンは1868(明治元)年から1876(明治9年)まで日本に滞在し、潮岬灯台をはじめ多くの灯台の建設に携わった。  
*2 遊覧船:石廊崎岬めぐり遊覧船は石廊崎港から出港し、海上から「石廊埼灯台」 、奥石廊崎、海底が見える「ヒリゾ海岸」、「みのかけ岩」などを巡って25分ほど。
*3 南伊豆遊歩道:遊歩道の終点には妻良湾があり、古くから風待ち港として知られる子浦や妻良(めら)の集落がある。妻良湾には、マグマの上昇痕跡である岩脈が地層の縞模様を断ち切った様子が観察できる「蛇下り」や、海食崖に石仏群が鎮座する「子浦三十三観音」、火山性の地層に海流や波浪によってできた複雑な波紋模様が見られる海岸など見どころも多い。
*4 波勝崎歩道:路線バス利用の場合、バス便がないため、バス停波勝崎口から遊歩道入口まで3.5kmほど歩くことになる。
関連リンク 南伊豆町商工観光課(WEBサイト)
参考文献 南伊豆町商工観光課(WEBサイト)
伊豆半島ジオパーク「南伊豆」(WEBサイト)

2023年10月現在

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