MOA美術館えむおーえーびじゅつかん

JR東海道本線・東海道新幹線熱海駅の北約2kmの丘陵地に建つ。1957(昭和32)年に開館した熱海美術館を前身としている。
 1982(昭和57)年、創立者岡田茂吉*1の生誕100年を記念して、日本美術を中心とした美術品の展示、能や茶の湯などの推進、日本文化の情報発信などを目的とし、地上3階、地下1階、延べ床面積1万7,000m2の近代的美術館が建設され、MOA美術館として再開館された。標高270mの高台に立つ本館は、つつじ山、梅園などがある瑞雲郷と名付けられた約23万6,000m2の広大な庭園内に位置する。
 エントランスから美術館本館まで約60mの高低差があり、総延長200mにおよぶ7基のエスカレーターが設置されている。途中、直径約20mの円形ホールでは、依田満・百合子による日本最大の万華鏡のプロジェクションマッピングを鑑賞できる。館内の展示空間は、2017(平成29)年に屋久杉、行者杉、黒漆喰、畳など日本の伝統的な素材を取り入れ、リニューアルしている。                                                                                 
 収蔵品には、尾形光琳筆の「紅白梅図屏風」、野々村仁清作の「色絵藤花文茶壷」、「手鑑翰墨城」の国宝3点、「樹下美人図」、「樵夫蒔絵硯箱」など重要文化財67点をはじめ、東洋古美術に加えて、ヘンリー・ムーア作「王と王妃」像など約3,500点が収蔵されている。
 本館には展示室が6室あり、展示替えを行いながら常時約100点が展示されており、展覧会も随時企画されている。このほか、豊臣秀吉の「黄金の茶室」、尾形光琳の屋敷を復元したもの、能楽堂、ミュージアムショップ、喫茶・食事処*2などがある。なお、「MOA」とはMOKICHI・OKADA・INTERNATIONAL・ASSOCIATIONの略語。
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みどころ

まず、驚かされるのは、メインエントランスから本館に向かう長大なエスカレーター。刻々と壁面や天井の色調が変化し、吸い込まれるように途中にある円形ホールに向かう。ここでは一面、万華鏡がマッピングされており、色彩と光、そして音楽のアンサンブルを楽しむことができる。
 本館前のムアスクエアからは、初島や伊豆大島が浮かぶ相模灘の雄大で素晴らしい風景が望める。ここにはイギリスの彫刻家ヘンリー・ムアの作品「王と王妃」も展示されている。本館の周囲は広大な庭園となっており、季節折々に相模灘の海景とともにサクラや新緑、紅葉など満喫できる趣向になっている。
 日本、東洋美術を中心に豊富な収蔵品のなかから順次展示を行っており、日本美術の特色と素晴らしさを目の当たりにできる。とくに国宝の尾形光琳「紅白梅図屏風」は琳派の代表的な作品であり、その卓越した筆さばきや画面全体のリズム感、現代的ともいえるデザイン性をじっくりと堪能することができる。
 展示室は日本の素材を生かしており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。また、秀吉の「黄金の茶室」の復元など、鑑賞者を楽しませてくれる工夫が随所にみられる。
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補足情報

*1 岡田茂吉:1882(明治15)~1955(昭和30)年。箱根美術館とMOA美術館の基盤を築いた人物。美術を通して人々の心を豊かにし、日本文化を世界に発信する美術館創設を目指した。箱根、熱海に美術館を創設。                                                                       *2 喫茶・食事処:館内には、スイーツ、カフェ、和食処、蕎麦、和菓子と抹茶・煎茶、5軒の飲食店がある。
関連リンク MOA美術館(WEBサイト)
参考文献 MOA美術館(WEBサイト)
『美術人名辞典』思文閣
国指定文化財等データベース(文化庁)(WEBサイト)

2023年10月現在

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