郡上八幡の食品サンプル工房ぐじょうはちまんのしょくひんさんぷるこうぼう

街の飲食店の店頭ウインドウを飾る料理見本である「食品サンプル」作りは、郡上市出身で昭和時代の実業家である岩崎瀧三(いわさきたきぞう)*を先駆者として事業化され、大いに発展してきた。今や郡上市の重要な地場産業になった食品サンプル業は、全国生産量シェアの約60%を占めている。
 初期の食品サンプルは、実物を寒天で型取りをし、蝋(ろう)を流し込んで作られた。溶けやすく壊れやすい蝋サンプルを改善して、合成樹脂へと変化していった。ビニール樹脂やシリコンゴムを材料に加工し、現在は実用性に加え芸術性もある品質になっている。
 町に幾つかある食品サンプル工房には、業務用の食品サンプルはじめ土産用として携帯ストラップやキーホルダー等のサンプルグッズが並んでいる。更に製作工程見学のほか、食品サンプル作りができるところも多くあり、体験観光としての人気が高まっている。
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みどころ

料理メニューに合わせ一品一品仕上げた本格的な業務用食品サンプルはじめ、土産用の携帯ストラップやキーホルダー等のサンプルグッズもそれぞれ丁寧に手作りされている。 寿司・おにぎり・おでん、スパゲティ、ラーメン、えびフライといった和洋食、アイスクリーム等スイーツ、野菜や果物に至るまで多種多様なサンプルが用意されている。本物よりも ホンモノらしく見え、おいしそうで思わず口許に持っていきたくなるほどだ。
 なお、サンプルではない実際の郡上名物グルメは、清流で育った「郡上鮎・和良鮎」、昔ながらの郡上味噌を隠し味に使った「奥美濃カレー」、味噌・醤油やニンニクなどで味付けされた鶏肉を野菜とともに焼いて食べる「鶏(けい)ちゃん」、野生イノシシ肉の「ジビエ料理」などで、これらもぜひ味わいたい。
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補足情報

*岩崎瀧三(いわさきたきぞう):現・郡上市八幡町生まれ。実業家。1895(明治28)~1965(昭和40)年。1932(昭和7)年、大阪市に「食品模型岩崎製作所」を設立し、食品サンプルの事業化に成功。妻のつくったオムレツをモデルとした第1号を「記念オム」と名付けた。1955(昭和30)年、郡上八幡に岐阜工場を建設。1963(昭和38)年、「岩崎模型製造株式会社」と社名変更し、事業展開した。サンプル業が地場産業として根付き、郡上が「食品サンプルの町」として知られるようになった産みの親。