飛騨の朴葉みそ料理ひだのほおばみそりょうり

乾燥させた朴(ほお)の葉の上に味噌をのせ、ネギ、シイタケ、漬物など好みの具と一緒に、ゆっくり焼きながら食べる飛騨地方の郷土料理。朴葉の風味が味噌などにしみこんだ素朴な味わいである。ご飯のおかずに合うほか、酒の肴にも良い。
 元々は寒さの厳しい飛騨で、囲炉裏(いろり)の炭火に金網をのせ、朴葉を敷き、凍った漬物や土に埋めておいたネギを味噌と共に温めながら食べたという。味噌は、家庭で大豆・米・塩とで仕込み、砂糖や味醂・酒等で調味した。塩分控えめで甘みが特色。
 朴葉は、飛騨地方に多く育つ朴の木の葉で、青い葉は香りがよく殺菌作用があることから、朴葉寿司や朴葉餅にも使われている。朴葉味噌には、秋に落葉した長さ20cm~30cmで幅も大きな朴葉を拾い集め、選別・乾燥し、きれいにして使う。大きくて燃えにくい朴葉は、味噌と食品を焼くのに具合が良く、朴葉の香りと風味もつくので、調理用具の鍋代わり、皿代わりとして重宝されている。
 現在、地元の飲食店では、珪藻土(けいそうど)でできた民芸風卓上コンロを使い、朴葉の上で味噌、山菜などに上質の飛騨牛を加えて味わう「朴葉みそステーキ」という一品料理も定番メニューとなっている。
 また、みたらし団子も飛騨名物。醤油をそのまま串団子に塗ってあぶり焼きにする。砂糖醤油等の葛餡をかけないのが特徴。
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みどころ

高山生まれの作家・早船ちよ氏は、少女時代(1920年代)に父親の口癖で、「みそ菜三年ってな。朴葉みそほど、うんまいものはないでな。つい二杯三杯と飯を食い込む。大百姓でも、みそ菜三年つづけると、身上(しんしょう)をつぶすっていうぞ」と言われたことを回想している。朴葉みそに、ひね生姜をすりこんだり、胡麻油をたらしたり、季節の山菜を添えるなどして、朝に食べていた。
 身の回りにある朴葉、味噌、ネギ、漬物、山の幸などを組み合わせ、手軽に出来て、かつ美味しい。まさに、飛騨の風土と先人達の工夫が生んだ、この地域の生活に根付いた味覚である。焼きながら、味噌と具を混ぜていくと香ばしい香りがし、口にいれるとおいしさが温かく広がる。特に冬の時季は身体も温まり、飽きがこないメニューである。飛騨を訪れた旅人も一度食べると、くせになってしまう料理だと思う。お土産にも人気である。