飛騨国分寺ひだこくぶんじ

JR高山駅の北東300mに位置する。飛騨国の国府が高山に移った奈良時代(710~794年)に、聖武天皇の勅願により全国に建立された国分寺のひとつで、746(天平18)年に創建された古刹である。本堂に、本尊の薬師如来坐像、旧国分尼寺の本尊であった聖観世音菩薩像*を安置する。
 室町時代(1333~1573年)中期に再建された本堂は、正面5間、側面4間、単層入母屋造の建築様式だが、正面向拝と東側は安土桃山時代(1573~1603年)に修理されている。非公開ではあるが、平家一門の家宝である小烏丸と伝えられる無銘の太刀が伝承されている。
 本堂東側には、奈良時代創建当時のものと推定され「飛騨国分寺塔跡」と呼ばれる「塔心礎石」*が玉垣に囲われて据えてある。そのほか境内には、1821(文政4)年の再建で飛騨地方唯一といわれる三重塔、幹周囲10m樹高28m樹齢1200年を超える大イチョウ、旧高山城から移築された鐘楼門などがある。
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みどころ

国分寺が奈良時代の746年に建てられ、飛騨高山は早くから開けていった。JR高山駅から徒歩数分と近く、長い歴史を持つ古刹には、国の重要文化財に指定されている立派なお堂や仏像、天然記念物の大きなイチョウ、「飛騨の匠」が手がけた三重塔などがあり、歴史的興味が高まる寺である。
 本堂では、平安時代(794~1185年)の古い仏像を比較的近くで拝観できる。行基菩薩一刀三礼の作と伝わる一木造の薬師如来坐像、立像木彫で春日仏師の作と伝わる聖観世音菩薩像、恵心僧都の作と伝わる阿弥陀如来坐像。また、江戸時代の円空上人(1632~1695年)作の弁財天像も安置されている。
 行基の手植えと伝えられる大イチョウにも圧倒される。特に紅葉時期は、黄金色に輝き見事である。昔から、国分寺のイチョウの葉が落ちると初雪が降る、と伝わる。
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補足情報

*聖観音菩薩像:国分寺の西600mにあった国分尼寺の本尊、春日仏師の作と伝えられる。
*塔心礎石:国分寺建立時に建てた七重塔の心礎(心柱の礎石)。形はほぼ方形、上面は円柱座、中央に円孔穴がある。