伊吹山いぶきやま

標高は1,377m、岐阜・滋賀の県境にそびえる山で、伊吹山地の南端を占める。古事記や日本書記に記され、日本武尊(やまとたけるのみこと)*の伝説がある。平安時代から修験者が集まる山岳修行の山でもあった。深田久弥選定の日本百名山の一つ。
 全山石灰岩*からなり、大部分が小潅木を交えた草原、さらに伊吹百草の名があるほどの薬草の宝庫である。草花の種類は1300種といわれ、そのうち薬草*は280種を数える。5月中旬から10月中旬にかけて、イブキトラノオ・シモツケソウ・リンドウなど数多くの高山植物が咲いた花畑が広がる。最盛期は7月下旬~8月上旬。室町時代後期に織田信長が広い薬草園を開かせ、南蛮渡来の薬草を植えたといわれ、江戸時代に医者や薬屋が多く登山した。
 現在、岐阜県関ケ原町から車・バスで有料道路伊吹山ドライブウェイを利用し、終点の9合目山頂駐車場(1,260m)からは、山頂まで徒歩登山道*が続いている。山頂には日本武尊の石像・山小屋などがある。麓からの登りは滋賀県米原市上野にある登山口からで、特に7・8月は御来光を楽しむ夜の登山者が多い。*
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みどころ

古来より高山植物や薬草、野鳥の宝庫として名高い。名古屋近郊からも目立つ山で、東海道や新幹線の車窓からは間近にどっしりした姿を眺められる。江戸時代の俳聖・松尾芭蕉も「そのままよ月もたのまじ伊吹山」とその美しさ立派さを詠んでいる。
 伊吹山ドライブウェイ(4月中旬~11月末・全長17km)で大自然の美しい景色を堪能しながら9合目駐車場まで登る。「展望階段・展望テラス」から琵琶湖が見え、竹生島や賤ヶ岳や姉川古戦場史跡を望む。眺望と高山植物、特に春夏の花畑を楽しみながら軽いハイキングで山頂へ登ると、山頂から濃尾平野・琵琶湖を眼下に、鈴鹿・比良の山々、快晴ならば遠く白山や日本アルプスも見渡せる。
 また伊吹山は、冬に日本海側からの季節風の通り道となり、乾いた冷たい風を運ぶ。南東にある濃尾平野では、冬季に北西の方角から吹く季節風を「伊吹おろし」と呼び、冬の寒さの代名詞になっている。伊吹山の存在の大きさを感じられる。
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補足情報

*日本武尊(やまとたけるのみこと):景行(けいこう)天皇の皇子で古事記と日本書記に記されている英雄。諸国を平定したと伝えられ、各地に伝説が残る。
*全山石灰岩:伊吹山の南西側は石灰岩の採掘跡やスキー場などが目立つので、東側から眺めると、その大きさと自然の美しさが実感できる。
*薬草:ダイコンソウ・ワレモコウ・イブキジャコウソウなど。外来種ではセンキュウ・オナモモミ・ツルドクダミなどがある。
*駐車場~山頂の登山道:9合目山頂駐車場(1,260m)~山頂(1,377m)へ向かう登山道は厳密には3つあるが、そのうち一つは下山専用のため、山頂までは2つのハイキングコースが利用できる。
*2023年7月12日の大雨により、米原市上野からの伊吹山登山道が大規模に崩落し、麓から伊吹山への登山ができない。復旧までに長期間かかる見通し。伊吹山ドライブウェイを使って9合目山頂駐車場から山頂までの登山は可能だが、伊吹山ドライブウェイから伊吹山登山道を使って麓まで下山することはできない。