千曲川(小諸周辺)ちくまがわ(こもろしゅうへん)

千曲川は山梨・埼玉・長野の三県にまたがる甲武信岳(こぶしだけ)に源を発し、全長214kmにわたる。八ケ岳・蓼科山・浅間山などの山々を縫って流れ、越後に入って日本一の長流 信濃川となる。
 千曲川は長野県を象徴する川の一つ。佐久鯉を育むのも、戸倉上山田の温泉街を流れるのも、また川中島の戦いの舞台となったのも、この千曲川である。
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みどころ

千曲川を「千曲川(飯山周辺)」「千曲川(小諸周辺)」の2つとしてそれぞれ評価。小諸周辺は河岸段丘がはっきり分かる。小諸の懐古園から見る千曲川は、蛇行しながら流れ下る様と周辺の濃い緑が調和して美しい。
 千曲川の名は、青年時代を小諸で過ごした島崎藤村の『千曲川旅情の歌』『千曲川のスケッチ』*などでも印象深い。
 「青く澄んだ川の水は油のように流れていても、その瀬の激しいことと言ったら、眩暈がする位だ。川上の方を見ると、暗い岩蔭から白波を揚げて流れてくる。川下の方は又、矢のように早い。それが五里淵(ごりぶち)の赤い崖に突き当って、非常な勢いで落ちて行く。どうして、この水瀬が是処(こっち)の岩から向うの崖下まで真直(まっすぐ)に突切れるものではない。」(新潮文庫『千曲川のスケッチ』より)
 以前は鮭も上ってきたといわれる。ダムの建設により藤村の眺めたような流勢はなくなったものの、切り立つ崖や淵が当時の面影を残している。(林 清)
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補足情報

*『千曲川のスケッチ』:随筆・小品集。島崎藤村作。1912(明治45・大正1)年に刊行。信州小諸の千曲川流域の自然と農村生活の断面を記録したもの。詩人藤村から小説家への転換を示す時期の執筆。