總持寺祖院そうじじそいん

輪島市門前町の中央、八ガ川の南にあり、山内約2万坪とされる風光幽玄な寺院。正式名称を諸嶽山總持寺といい、越前の永平寺とともに「曹洞出世之道場」として栄えた曹洞宗の大本山である。1321(元亨元)年、瑩山紹瑾(けいざんじようきん)*によって開かれ、2世峨山韶碩(がざんしょうせき)に定められた五院輪住制*により発展、前田氏の外護のもと江戸中期には全国に末寺1万6391を配し境内に大小70余棟の殿堂伽藍を有するまでに至ったが、1898(明治31)年4月、火災のため諸堂の大部分を失った。これを機会に本山機能は横浜市鶴見に移り、門前町總持寺は祖院と呼ばれるようになった。しかし、再建で山門や仏殿、法堂など多くの建物がよみがえった。その後、2007年3月の能登半島地震で境内の国登録有形文化財17棟が全て被災。座禅堂が全壊するなど甚大な被害を受けたが、2020年12月に修復工事が完了し、総ケヤキ造りの山門や法堂、さらに仏殿などの建築物のたたすまいが再び大本山の威厳と風格を取り戻し、当時の面影を充分伝えている。なお経蔵*と伝燈院(一部焼失)は江戸時代に造られた建物である。
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みどころ

入口から進んでまず目につく山門の大きさに威圧される。決して豪華ではなく、禅宗寺院にふさわしい質素なたたずまいではあるものの、迫力が胸に響く。山門をくぐると庭を隔てて正面に法堂、右側に仏殿、左側に僧堂などが立ち回廊で結ばれている。「それぞれの建築物が庭園と美しい調和を見せている巨大な寺院は建築美の極致と言ってもいいかも知れない。また法堂の中の欄間に施された瑩山紹瑾禅師の一生を描いた精巧な彫刻は一級の美術作品とも言え、火灯窓と白壁のコントラストが美しい座禅堂などに目と心が奪われる。」(「能登日記」)とされ、禅宗の大本山であった当時の面影を今に伝えている。拝観後に心が洗われる思いがする寺院である。
 なお、座禅体験や精進料理の提供(要予約)も行っている。また、2021(令和3)年は開創700年にあたり、慶讃法要などの行事が行われる。
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補足情報

*瑩山紹瑾:1268~1325年。鎌倉時代の禅僧で、曹洞宗の中興の祖である。越前(福井県)に生まれ、幼い時より永平寺の徹通義价につかえた。1289(正応2)年加賀大乗寺(金沢市)に転住、のち石川県門前町に總持寺を開き曹洞宗門発展の礎石を築いた。著書に「伝光録」「坐禅用心記」などがある。
*五院輪住制:全国の同宗門のなかから選ばれた5院がまわりもちで總持寺の経営にあたったもの。この制度は、1365~1870(貞治4~明治3)年までつづいた。
*経蔵:加賀前田家6代吉徳公より寄進され、工事奉行大槻伝蔵の監督の下で1743(寛保3)年2月に完成された木造宝形造の建物で、県指定の文化財。