見附島みつけじま

能登半島の珠洲市の南部、鵜飼川河口一帯は、松林越しに内浦の海を望む穏やかな海岸である。その中央部に周囲約300m、高さ28mの大きな岩がそびえ立つ。市内にある式内社三社の一つである加志波良比古(かしはらひこ)神社の神(加志波良比古)が、当地に着いた際に海上よりはじめて見つけた島、また弘法大師が佐渡から能登へ渡った際に最初に目についた島が見附島であるという伝承がある。
 この島を形成している黄白色の地層は、能登半島北東域に散在する新第三紀中新世後期の泥岩~珪藻泥岩層(飯塚珪藻泥岩)とよばれる堆積岩の一種で、頂には照葉樹林が茂っており、先端部分が突き出たその独特の見た目から別名「軍艦島」とも呼ばれている。
 見附島商店会ホームページによると、「この付近は月の名所でも知られており「見月島」(みつきじま)と記す文献もある。島の頂上には祠(見附神社)があり、市杵島姫命(弁財天)を祭ってある。初め薬師如来を安置したが、佐渡の人が盗み去ったという。これ以来、祭日3月18日(今の4月18日)の前日には、必ず東北風(あいの風)が吹いて神霊が佐渡よりお帰りになるといわれている。昭和30年代頃までは東側から島へ上り祭りを営むことができたが、風化・浸食が進み上ることができなくなり、神社は平成12年に見附公園内に移された。」(見附島商店会HP)とある。
 「奥能登沿岸の地形形成過程や植生を知るうえで重要な学術的資料であり、石川県の代表的な景勝地である。」とされている。
 なお、かつて見附島の隣には、見附島とともに信仰の対象となっていた「小島」があったが、年月を経て波により浸食され、2019(令和元)年10月の台風19号の強風と高波の影響により完全に消失した。
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みどころ

駐車場に車を止めて松林を抜けると、目の前に軍艦の船首を思わせる巨大な岩が現れる。まず、その迫力ある形に威圧されるとともに、背後の海の風景と相まって感動を覚える。波打ち際には「えんむすびーち」*と書かれた門柱に吊り下げられた鐘が設置されており、鳴らすと恋が成就するといわれており、訪れたカップルが一緒に鐘を鳴らしている姿をみることもある。
 見附島は能登半島の南側・富山湾に面しており、晴れた日には海を隔てて立山連峰が見られる。また、日の出の時間に見附島の横に朝日が昇る際には、空と海がオレンジ色や紅色に変わり、大変綺麗であるとされる。なお、夕方にも見附島はライトアップされ、とても幻想的な場面を見る事が出来るとのことである。見附島周辺には温泉宿泊施設などもある。
 見附島へは、現在も干潮時には歩いて渡ることが出来るが、途中深いところもあり、バランスを崩すと海に倒れ落ちそうなので注意が必要である。また、シーカヤックツアーも楽しめるほか、夏期は周辺に海水浴場も開設されている。
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補足情報

*「えんむすびーち」:見附島から恋路海岸*までの海岸線が「えんむすびーち」と名付けられている。松林の中には能登沖地震(1993年)に見附島の上から落下した天然林の椿を植樹した「見附千年椿」(樹齢千年を数える)や、その千年椿のもとへ恋路から輿入れし結婚式を盛大に行ったという「恋路椿」、さらにこの夫婦椿の人工授粉に誕生した「恋見附子宝椿」が植えられている。
*恋路海岸:「その昔、深い恋仲となった鍋乃と助三郎。鍋乃に思いを寄せる恋仇の男の罠のため、助三郎は海の深みにはまって命を落とし、鍋乃も助三郎の後を追って海に身を投げ死んでしまう」という悲恋伝説から、この地が「恋路」と呼ばれるようになった。