五箇山の合掌造り集落ごかやまのがっしょうづくりしゅうらく

五箇山は、富山県の西南端部、庄川の上流および支流利賀川に沿う地域で、上梨谷・下梨谷・赤尾谷・小谷・利賀谷の5つの谷間(やま)の総称といわれる。1,500m級の山々に囲まれた豪雪地で、合掌造りの家屋で知られ、岐阜県の白川郷荻町とともに相倉集落、菅沼集落がユネスコ世界遺産に登録されている。
 合掌造りは豪雪地帯である五箇山・白川郷に見られる住宅様式で、急勾配の大きな茅葺き屋根が特徴。釘などの金属は使用せず、縄や木製のくさびを利用することなどにより雪の重さによる歪みにも耐える柔軟な構造となっている。風通しがいい広い屋根裏空間は養蚕に利用され、土間では和紙作り、床下を利用して火薬の原料である「塩硝」の生成も行われるなど、極めて機能的かつ合理的に造られた建築である。江戸時代では加賀藩領の流刑地として、塩硝と丈夫な和紙を使った藩札の生産地として重視された。
 また五箇山には多くの民謡が伝承されており、「こきりこ」「麦屋節」は国の無形文化遺産に選定されている。
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みどころ

相倉集落と菅沼集落は世界遺産であるとともに、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、山間の地に歴史的景観を見せている。両集落ともに、住民と宿泊客以外は車の乗り入れができず、指定駐車場に停めてから徒歩で向かうこととなる。菅沼集落は、国道156号線沿いに駐車場があり、そこから国道沿いの歩道から集落を見下ろすことができる展望スポットがある。相倉集落は、国道156号線から国道304号線に入り約2km先を左折、山道を上がっていくと駐車場がある。駐車場から案内に沿って棚田のあぜ道を徒歩で登ると展望スポットがあり、集落を一望できる。
 集落には、合掌造り集落について学べる展示館、紙漉き体験施設、お土産物屋、食事処・お休み処がある。また、民宿も何軒かあり、合掌造りの家屋に宿泊することもできる。
 五箇山は観光地であると同時に、住民の日常生活の場でもある。宿泊すると、観光客が立ち入れない朝の時間帯や夕刻に素顔の合掌造り集落を垣間見ることができる。ご飯の炊ける匂いや調理の音などが合掌造りの家屋から聞かれるのは、「非日常な日常」ともいえる特別な瞬間であろう。
 世界遺産となっている相倉集落と菅沼集落の間にあるのが、旧平村上梨地区の村上家である。観光案内所のそばにある村上家は、国指定重要文化財となっていて、「塩硝まや」といわれる塩硝づくりのための作業場があったり、典型的な合掌造り家屋を見学することができる。近くには加賀藩領時代の流刑小屋や山岳信仰や神仏混交の名残をとどめる国指定重要文化財の白山宮本殿などもある。
 また、旧上平村西赤尾町には国指定重要文化財の岩瀬家がある。約8年の歳月をかけて建てられた最大規模の合掌造りで、かつては加賀藩へ塩硝を上納する役宅であったため特別に欅材を使用するなど、加賀藩の威光を感じられる建築物となっている。