美女平の立山杉びじょだいらのたてやますぎ

美女平は立山・黒部アルペンルートの玄関口で、麓の立山駅と立山ケーブルカーで結ばれ、標高977mに位置する。ここから標高1460mの上ノ小平上部にかけての美女平溶岩台地は、タテヤマスギとブナの巨木が集団で生育する森林となっている。このうちタテヤマスギは杉の変種のアシウスギの一種で、枝が垂れ、雪に耐える性質が特徴である。
 富山森林管理署が行った調査で、この区域に幹周6m以上のタテヤマスギが147本確認され、天然杉が残されている日本最大の地域であることが判明した。
 スギの種子は軽く、落葉の積もった場所では発芽しない事が知られており、平坦な美女平溶岩台地では、朽ちた古株の上に着生して発芽する、いわゆる古株上更新が一般的である。発芽したタテヤマスギはすぐに多くの伏条幹を出し、一方、根は古株を伝って地面に到達する。根が古株と地面の両方から養分を吸い上げるようになると新しい株は急激に成長し、次第に古株を覆うようになる。そして古株が完全に朽ち果てると、そこは大きな空洞として残り、根が主幹のように成長して、巨木となって原生林の中に鎮座することになる。 
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みどころ

美女平周辺の原生林の中にはハイキングやバードウォッチングなどを楽しむことができる散策コースが整備されている。散策路では、樹齢200〜300年のブナの原生林や、中には樹齢1000年を超えるタテヤマスギの巨木たちを見ることができ、また、60種類以上の野鳥が観察され、バードウォッチングのスポットとしても知られている。
 美女平駅は立山ケーブルカーと高原バスの乗り換え場所であり、ほとんどの人は乗り換えを急ぐが、時間に余裕があれば、散策路を1時間ほど歩くことによって、弥陀ヶ原や室堂とは全く異なる自然を体感できる。
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補足情報

*美女杉伝説:立山の開山者と言い伝えられている佐伯有頼の許婚者の美しい姫が、有頼に会いたい一心で立山に登ってきたものの、山を拓くまで帰ることはできないと追い返された。しかたなく山を下りる途中、一本の杉に歌を詠み祈ったところ後に願いが成就し、二人は結ばれたと伝えられている。後に、この杉を美女杉と言い、この歌を三度唱えて祈れば恋は成就すると信仰されている。また、美女杉のあるあたり一帯を美女平と呼ぶようになった。