称名滝しょうみょうだき

室堂平周辺の水を集めて流れる称名川が弥陀ヶ原にはいると、ほぼ垂直にその北端を削りとり、150m以上の深さに切れ込んだ峡谷の中を流れる。称名滝は、この立山の大噴火による溶結凝灰岩の台地を浸食してできたV字峡谷「称名廊下」の末端から、標高差350mの高さを落下する瀑布である。称名滝は、上から70m、58m、96m、126mの4段からなり、それらが連続して一筋となり、日本最大の落差をもつ巨大な滝となっている。滝の音が称名念仏*1を唱えているように聞こえたことから名付けられた。
 春から夏にかけては水量が増し、迫力ある水しぶきが滝壺から吹き上がる。この時期、称名滝の右側にもう1本、滝が現れることがある。涅槃の滝とも呼ばれるハンノキ滝(ネハンの滝)で、落差約500mある。日本一の称名滝より150mも長いいわば幻の日本一のこの滝は、春の雪解けの季節や雨量の多い梅雨の時期などに出現しやすく、称名滝と合わせV字形で流れ落ちる珍しい光景を見ることもできる。
 称名滝は、10万年ほど前、現在よりも約10km下流の現在の立山駅付近に位置していたと考えられている。その後、1年間に約10cmの速度で後退し、長い年月をかけて現在の滝壺の位置に至っている。
#

みどころ

滝を下から見上げる位置に展望所となる称名滝見台園地が整備されている。そこから見る日本一の落差を誇る称名滝の大瀑布には圧倒される。夏場の暑い時期には、滝からミスト状のしぶきを感じることができ、涼が得られ気持ちが良い。5月上旬~11月上旬は、立山駅から称名平駐車場まで称名滝探勝バスが運行される。マイカー利用の場合も称名平駐車場を利用することになる。駐車場から滝壺までは約1.2km、遊歩道を歩いて約25~30分かかる。
 上部からの眺望は、立山黒部アルペンルートの美女平駅から室堂へ向かう立山高原バスから眺めることができる。行き(上り)は進行方向左側、帰り(下り)は進行方向右側に滝があり、バスは滝見台(標高1,280m)で停車、または速度を緩めるため称名滝を遠目から見学できる。
 称名滝から弥陀ヶ原へは八郎坂と呼ばれる登山道があり、途中、変化する称名滝の姿が眺められる。急坂の難所なので上級者向けコースであり、下りのルートをお勧めする。(2024年1月の能登半島地震および7月の大雨による登山道崩壊のため、2025年3月現在通行止。登山道のオープン時期は毎年異なるので、立山町役場へ要問合)
 また、称名滝の下流約9kmに及ぶ流域は、10月中旬~11月上旬にかけて紅葉が美しい。この辺りは、溶岩台地を侵食してできた溶結凝灰岩の大岩壁が約2kmも続く。邪悪で近寄りがたい形から「悪城の壁」*2と呼ばれるスポットがあるので、移動中に眺めると良いだろう。
#

補足情報

*1 称名念仏:仏の名を声に出して称える行法で口称念仏ともいう。浄土教における称名念仏とは、「南無阿弥陀仏」の六字名号を称える行法をさす。
*2 悪城の壁:称名滝の下流、称名川の左岸にある長さ2km、高さ500mに達する切り立った大岩壁。称名滝の後退によってできた称名渓谷の岸壁を全層雪崩がさらに浸食してできたといわれている。
関連リンク (一社)立山町観光協会(WEBサイト)
参考文献 (一社)立山町観光協会(WEBサイト)
とやま観光ナビ(富山県地方創生局 観光振興室・公益社団法人 とやま観光推進機構)(WEBサイト)
称名滝(立山黒部アルペンルート)(WEBサイト)
『とやまの滝』北日本新聞社
『立山カルデラ砂防博物館 常設展示総合解説』立山カルデラ砂防博物館

2025年03月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。