箱根旧街道杉並木はこねきゅうかいどうすぎなみき

屏風山の西麓、芦ノ湖湖岸近くに延びる箱根旧街道に残る杉並木。現在は約500m、元箱根から恩賜箱根公園まで続く。高さは30m程度、中には幹回り4mを超える大木が約400本残されている。
 徳川家康が江戸幕府を開いた翌年の1604(慶長9)年に諸国の街道の両側に松や杉を植えたのが始まりで、1618(元和4)年幕府の命を受け、川越藩主・松平正綱が箱根宿を設けた時にこの地に植林したものという。
 並木は、暑い夏には旅人に緑陰を与え、冬は吹き付ける風や雪から旅人を守る効果もあったという。
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みどころ

滝廉太郎のいさましい唱歌『箱根八里』に「昼なお暗き杉並木……」歌われるほど、かつてはもっとたくさんの杉並木があったという。しかし1904(明治37)年に湯本から芦ノ湖畔に至る新道を工事する時に、不足した工事費を捻出するために、松と杉合わせ1,000本を超えて伐採されたとのことで、現在残されていればと、残念な思いにかられる。
 街道の入口には石の一里塚があり、江戸から24里と書かれている。この街道で杉の間から眺める芦ノ湖の逆さ富士が有名だが、湖面が波立っている時も多くめったに見られない。
 箱根神社や芦ノ湖湖畔の喧騒に比べ、この並木を歩く人は少ない。それだけに昔ながらの東海道の雰囲気が感じられ、かつ落ち着いて散策できるため外国人の姿も見られる。(林 清)