箱根火山後期中央火口はこねかざんこうきちゅうおうかこう

富士火山帯に属する箱根火山は、伊豆半島の基部に噴出したカルデラ火山(外輪山、前期中央火口丘、後期中央火口丘)である。このうち、後期中央火口丘部分(最後の噴火により構成された火山群)については、最高峰である1,438mの神山を中心に、二子山、駒ヶ岳、冠ヶ岳、早雲山、台ヶ岳などが囲む。
 歴史的にみると、箱根火山が活動を始めたのは今から約40万年前とされており、この時に金時山、明星が岳、明神が岳などの外輪山の原型が定まった。そして激しい爆発的活動でカルデラが形成された後、鷹巣山、浅間山などの前期中央火口丘が造られた。さらに激しい爆発的活動の後、後期中央火口丘が生成された。その後は神山北斜面の爆発で大涌谷が造られた。芦ノ湖は、この爆発によって、早川上流がせき止められてできたものである。
 天候は、春から夏にかけてもっとも不安定である。特に3月から5月は強風が吹くことがあり、芦ノ湖付近は濃霧も多い。花は桜・ツツジ・アジサイと咲きつづく。盛夏からは比較的安定した天候となり、箱根の秋は仙石原のススキの波に象徴される。冬の積雪はまれであるが、後期中央火口丘の中腹以上では霧氷が見られる。動植物については、大きな動物はほとんど見られず、南部外輪山や須雲川上流、金時山北麓にニホンザルが生息し、イノシシが時々、姿を見せる。昆虫類は非常に多く、北方系と南方系の接点の様相がある。植物はシダ類以上の高等植物が1,800種以上と豊富で、ヒメシャラ*・マメザクラ・ハコネコメツツジ・ハコネシダなどが代表的なものである。
 駒ヶ岳には麓の箱根園からロープウェイが架かっており、山頂へ簡単にアクセスすることができる。
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みどころ

神山、駒ヶ岳などが連なる後期中央火口丘を芦ノ湖の対岸から望むと、その形状の美しさが際立つ。
 一方、これらの山頂からは富士山や芦ノ湖全体を見渡すことができ、醍醐味が感じられる(神山は2020(令和2)年4月現在立入規制中)。
 特に駒ヶ岳は古くから人気の展望地点となり、展望のほか、箱根神社の奥宮である箱根元宮や、古代祭祀の場として白馬に乗った神が降臨したとされる馬降石などの見どころもいくつか存在する。
 また、駒ヶ岳では山頂までロープウェイを利用でき、乗車中は眼下に広がる眺めも素晴らしい。山頂の展望台からは芦ノ湖をはじめ、雄大な富士山や遠くに駿河湾の絶景をの望むことができる。(牧野 博明)
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補足情報

*ヒメシャラ:ヒメシャラは、サルスベリに似たツバキ科の植物で、箱根山は自生のほぼ東北限にあたる。神社裏山のものは120本あまりの純林を形成しており、6月末から7月初めにかけて2cmくらいの白い花をつける。

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