飛鳥山公園のサクラあすかやまこうえんのさくら

JRと東京メトロの王子駅のすぐ西側にある高台一帯が公園になっている。標高25m近い高台へは、高齢者、身障者、ベビーカー利用者に、あすかパークレール、愛称「アスカルゴ」*が運行されている。江戸時代から桜の名所として知られ、広重の絵などにもよく描かれた。8代将軍徳川吉宗は財政の建て直しを図った「享保の改革」で、質素倹約を断行した。その関連で上野の花見に時間や鳴り物などの制限が加えられた。寺社の境内地での花見はもともと管理がきびしく、十分に花見を楽しめなかった。そこで、庶民の不満を和らげるために、飛鳥山、隅田堤、品川御殿山、小金井などにサクラの植樹が行われ、名所となっていった。吉宗は、鷹狩をしたときに、彼の本藩の地である紀伊の熊野神を勧請した王子神社(王子権現)があることに感激し、飛鳥山を寄進して、サクラの苗を植えた。1720(享保5)年のことである。翌年1,000本を植え、1724(享保9)年には3,000本を植え継いだという。上野では禁止されていた酒宴や仮装ができたことから、人気は高まっていった。 1737(元文2)年閏11月に、吉宗による事績を顕彰するための飛鳥山碑*が、吉宗自らの立案企画で建てられた。1873(明治6)年には、太政官布告によって設けられた最初の5公園の一つに指定された。現在は区立公園となっている。公園には、飛鳥山博物館、紙の博物館*、渋沢史料館*の3博物館があるほか、旧渋沢庭園の中に、重要文化財となっている青淵文庫*と晩香廬*がある。飛鳥山の碑*は公園内のほぼ中央に立つ。
#

みどころ

サクラは約600本と1,000本に満たないが、それぞれが太く、みごとなサクラ並木を形成している。森林浴を勧めるほど、飛鳥山は豊かな樹木におおわれている。葉桜のころには1万5,000株のツツジ、続いて1,300株のアジサイがも見ごろとなる。秋のカエデも美しい。
#

補足情報

*アスカルゴ:形がかたつむり(エスカルゴ)に似ているところから、アスカヤマ+エスカルゴ=愛称アスカルゴとなった。標高差17.47mを自走式モノレールで行く。レール延長48m、傾斜角度24度、16名定員。高齢者や乳母車利用者の便に供している。
*飛鳥山碑:将軍吉宗から寄進された飛鳥山が桜の名所となったので、王子権現の別当金輪寺の宥衛上人が記念に建てたもの。都の文化財になっている。
*渋沢史料館:旧渋沢邸跡地に立つ渋沢栄一の史料館。彼の全生涯にわたる資料を収蔵、展示している。
*紙の博物館:王子の地に王子製紙があった関係から、1950(昭和25)年に「洋紙発祥の地」として知られる王子に設立された博物館。王子製紙は後に十条製紙に、現在は日本製紙。世界でも数少ない紙専門の総合博物館である。
*青淵文庫:渋沢栄一の傘寿(80歳)の祝いと、男爵から子爵に昇格した祝いを兼ねて竜門社(現・公益財団法人渋沢栄一記念財団)が寄贈した煉瓦及び鉄筋コンクリート造の建物。1925(大正14)年築。ステンドグラスや装飾タイルが彩りを添える。
*晩香廬:1917(大正6)年に落成した洋風茶室で、渋沢栄一の喜寿を祝って、現・清水建設(株)が寄贈。栄一はこの建物を内外の賓客を迎えるレセプション・ルームとして使用した。
関連リンク 飛鳥山公園(あすかサクラパークグループ(日本製紙総合開発/日比谷アメニス)(WEBサイト)
参考文献 飛鳥山公園(あすかサクラパークグループ(日本製紙総合開発/日比谷アメニス)(WEBサイト)
「桜がこんなに美しいのには理由がある」丸谷馨  2010 講談社現代新書
「櫻史」山田孝雄 1990 講談社学術文庫
飛鳥山公園(東京都北区)(WEBサイト)

2025年06月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。