国立科学博物館こくりつかがくはくぶつかん

1877(明治10)年に創立された自然史・科学技術史に関する総合科学博物館である。JR上野駅から徒歩5分、上野恩賜公園内に本館(日本館・地球館)がある他、港区の白金台に附属自然教育園、茨城県つくば市に実験植物園がある。
 この博物館の前身は1871(明治4)年に湯島聖堂内に設けられた文部省博物館であり、その後の所管の変遷を経て東京科学博物館として1931(昭和6)年に上野に移転・公開された。この時の本館が現在の日本館であり、1949(昭和24)年に国立科学博物館と改称されて現在に至っている。2023年現在の施設規模は、日本館9,369m2・地球館2万2,416m2・その他を含む3万3,612m2であり、これは鉄道車両や航空機等の展示が無いことを考慮すれば諸外国の著名な科学博物館*と比べても遜色の無い、むしろ自然史に関しては世界的にも質の高い科学博物館であると言えよう。
 展示内容は日本館が「日本列島の自然と生い立ち」をテーマに地質学と生物学の観点から日本の生物進化の歴史、地殻変動や気候変動の軌跡、さらに日本人の祖先とその生活について、多数の生物標本や岩石標本、そして文化人類学資料等から学ぶものとなっている。一方、地球館は「地球生命史と人類」がテーマであり、地球物理学から古生物学まで、地球環境の変化と生物の歴史を示している。また、科学技術の歴史展示に関しては、科学の発展に寄与してきた望遠鏡や物理実験器具等の歴史を示す機器が展示されている。
 運営する独立行政法人国立科学博物館は、自然史・科学技術史に関する調査・研究活動と展示を通しての自然科学及び社会教育の振興を図るという理念*があり、これが展示内容の企画や解説方法などの高い水準を保っている。
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みどころ

博物館は両翼を大きく広げた様式の重厚な日本館から入る。この日本館は1931(昭和6)に竣工したネオルネサンス様式の建物であり、国の重要文化財に指定されている。館内では吹き抜けとステンドガラスによる明るい回廊のなかで、近代日本で科学研究のために蒐集されてきた動植物標本や地質標本などを学ぶことができる。また、地球館の見どころは何と言っても恐竜の化石をはじめとした古代の化石標本である。これらの展示を通して、生物が地球環境の変化のなかで進化してきた過程を理解することができる。人類の進化に関しては、人類の祖先と現代の類人猿の関係、縄文人から弥生人、現代の日本人の文化人類学的な考察が展示されている。
 そして、日本館地下1階にある「シアター36〇」では、迫力ある映像を360度全方位から楽しむことができる。ここではホモサピエンスの歴史、恐竜の世界、宇宙138億年の旅、深海・漆黒のフロンティア等々の映像が月替わりで上映されている。
 なお、科学技術史の展示は、江戸時代のからくり人形や和時計から始まった日本における時計の歴史、望遠鏡等の科学の発展に寄与してきた測定機器等の歴史が中心であり、産業史の展示として人気の高い自動車・航空機・鉄道車両は少ない。このうち、航空機は2024年に開業した科博廣澤航空博物館に移設されている。
 最後に、「かはくHANDY-GUIDE」によるモバイル端末ガイドは、研究者による展示解説(音声と映像)、各種Q&A、おすすめコース案内が充実しているので、利用してみることをお薦めする。
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補足情報

*世界の科学技術博物館との面積比較:
国立科学博物館(上野)………3万3,612m2(自然史と動植物標本、自然科学展示含む。)
シカゴ・科学技術館………3万7,160m2(ロケット、鉄道車両、潜水艦等の展示含む。)
ミュンヘン・ドイツ博物館……約5万5,000m2(エンジン、航空機、自動車・鉄道車両含む。)
ワシントン・スミソニアン博物館………13万9,000m2(本館のみ。航空機等の展示含む。)
*自然史に関する科学その他の自然科学及びその応用に関する調査及び研究、並びにこれらに関する資料の収集、保管(育成を含む)及び公衆への供覧等を行うことにより、自然科学及び社会教育の振興を図る。
関連リンク 独立行政法人国立科学博物館(WEBサイト)
参考文献 独立行政法人国立科学博物館(WEBサイト)
「東京のミュージアム100」芸術新潮編集部編 新潮社
「全国博物館総覧」日本博物館協会編 ぎょうせい

2025年06月現在

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