小笠原のクジラ・イルカおがさわらのくじら・いるか

小笠原の沿岸や外洋では25種のクジラ・イルカの目撃が記録されており、なかでもザトウクジラ、マッコウクジラ、ミナミハンドウイルカ、ハシナガイルカはよく見ることができる。ザトウクジラは回遊性の大型鯨類であり、12~5月頃に小笠原近海に訪れて繁殖活動を行う。外洋性の大型鯨類であるマッコウクジラは水深が1000m以上の沖合に生息する。巨大なオス(16m程度)はなかなかお目にかかれないが、やや小ぶり(メスで10m程度)のメスと子供の個体群は一年を通して見られる。ミナミハンドウイルカ、ハシナガイルカは小笠原の近海に生息しており、通年で見ることができる。
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みどころ

小笠原のクジラ・イルカは父島のウェザーステーション展望台など小高い場所や、父島と母島間を航海するははじま丸から見られることもあるが、レジャーボートに乗って半日から1日かけて周辺海域を探索するガイド同行のツアーに参加してのホエールウオッチングや、イルカと泳ぐドルフィンスイミングを体験するのが一般的である。
 ザトウクジラのウオッチングは近海に訪れる冬季限定で、まっすぐに高く上がるブロー(潮吹き)を頼りにクジラを探して近づくと、まれにブリーチング(背面飛び)という派手な行動を見られることがある。
 マッコウクジラは外洋性のためかなり沖合に探しに出ることになる。広い範囲に生息するので、目視で見つけるほか、ホエールフォンという水中マイクでクジラが出す音を頼りに探したりする。水深1000m以深に潜るので、潜水時間が長いが、浮上した時に水面にいる時間もやや長めである。動きが比較的ゆっくりで、黒くて太い丸太のように見える。
 ミナミハンドウイルカは、船上観察に加えて、水中に入って一緒に泳ぐドルフィンスイムも体験できる。水中での観察は運や泳力にも左右される。ドルフィンスイムを目的に小笠原を訪れる人もかなり多い。
 ハシナガイルカは、日本近海沿岸域では小笠原では目にできることが多いレアな鯨類である。警戒心が強いので、船上観察に限られるが、英名がSpinner Dolphinという通り、時々スピンジャンプが見られる。
 一度の来島でこの4種類すべてを見られることはかなり稀であり、全てを観賞するためにリピートして訪れる観光客も多い。ホエールウォッチングツアーは、小笠原ホエールウォッチング協会が制定した自主ルール*に沿って行われている。ドルフィンスイムについても、小笠原村観光協会ガイド部が自主ルール*を定め、利用者の安全管理と、生態の保護・保全に努めている。1988年に小笠原諸島返還20周年記念事業のイベントとして母島で行われたホエールウォッチングが、日本で最初の商業的なホエールウォッチングと言われている。
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補足情報

*ホエールウォッチング自主ルール:小笠原ホエールウォッチング協会が1989年に制定。その後、科学的根拠をもとに改訂が重ねられている。小笠原諸島の沿岸20マイル以内を航行する20t未満の小型船であれば、ザトウクジラの場合はクジラから300m以内を減速水域、100m以内を侵入禁止水域とし、クジラの進路や行動を妨げないようにすることなどが決められている。
*ドルフィンスイム自主ルール:小笠原村観光協会ガイド部が2005年に制定。ひとつの群れにアプローチできる船は、船の大小を問わず4隻まで、ひとつの群れに対する水中へのエントリー回数を1隻につき5回以下とすることなどが決められている。