南島みなみじま

南島は父島の西側最南部のジョンビーチ・ジニービーチから西側に1kmほど離れたところにある、南北約1.5km、東西約100~200mの南北に細長い無人島である。観光のためのアクセスは小型のレジャーボート利用が一般的であり、父島の青灯台岸壁から20~30分ほどで行くことができる。サンゴなどの石灰質の殻をもつ生物が堆積した石灰岩でできており、周辺の海域には沈水カルスト地形*という独特な地形がみられる。内部にはドリーネ*と呼ばれる大きなくぼみがあり、真っ白な砂地でおおわれている。ドリーネの西側には、ぽっかりとあいたトンネルで外洋と繋がる扇池がある。砂地には絶滅したヒロベソカタマイマイ*の半化石が多数散らばっている。夏季には、アオウミガメの産卵上陸の足跡も多くみられる場所である。南島は国指定天然記念物、自然公園法の特別保護地区であり、世界自然遺産登録区域ともなっている。
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みどころ

島の東側の高台から白砂のドリーネと扇池を見下ろす姿は小笠原を象徴する景観のひとつである。半日や一日かけて父島周辺の海域をめぐるボートツアーの中で立ち寄り、上陸するのが代表的な楽しみ方となっている。南島の島内観光は東京都自然ガイド制度(南島)のルール*に従う必要があり、東京都自然ガイドの同行が必須となっている。ボートツアーでは通常、島の南側のサメ池からアプローチし、わずかに整備された着岸地点から上陸する。上陸前に靴底を海水で洗うなどして、靴底についた外来種の種子や生物等をもちこまないような配慮が求められる。上陸すると、ラピエ*といわれる尖った岩場の露出が顕著に見られ、歩行には十分な注意が必要である。青い扇池と白い砂地のコントラストは、砂地を歩きながら楽しむこともできるが、特に東尾根から見下ろした眺望は圧巻である。 周辺の尾根の上では、夏場はカツオドリ*が地上部に営巣していて、遠望することができる。「地上の楽園」といってもいいような島だが、日陰がないので、夏期はかなりの暑さを覚悟しなければならない。
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補足情報

*沈水カルスト地形:石灰岩が侵食や風化を受けてできたカルスト地形が海中に沈降したもの。
*ドリーネ:カルスト地形のひとつで、溶食された石灰岩台地にできるすり鉢状の凹地。雨水の流入口にあたる。
*ヒロベソカタマイマイ:200~300年前に絶滅した、やや大型のカタツムリ。南島内部の砂地では半化石した殻が多くみられる。
*東京都自然ガイド制度(南島)利用のルール:2003年から運用開始。上陸ルート、ガイドの引率人数に関する規定が定められている。
*ラピエ:雨水の侵食により鋭く尖った石灰岩地形。
*カツオドリ:大型の海鳥。腹部の白と羽の黒のツートンカラーが特徴的。南島は父島列島での主要な繁殖場所となっている。冬場はさらに南方へ移動する。