利島のツバキとしまのつばき

東京・竹芝客船ターミナルから東海汽船の高速船で約2時間20分の利島は、伊豆諸島の大島と新島の間に位置する。面積は4.04km2、周囲約8kmで、標高508mの宮塚山を中心としたゆるやかな円錐形の島である。約300名の村民が暮らすこの小さな島は、島全体の約8割がツバキに覆われている。面積が小さく資源が限られた利島は水資源が乏しく、稲作を始めとする農業には不向きであった。そのため様々な試行錯誤を繰り返したのち、椿栽培による椿油の生産に辿り着いたと考えられており、江戸時代以前からいまも椿油を生産している。斜面地における利島独特のツバキの段々畑の形成や、植栽と伐採が繰り返され、現在では島全体で20万本のツバキがあるといわれている。椿産業は島の基幹産業に発展し、生産量は日本一を誇り、椿油*の出荷等も盛んで、世界的にも類例のない「ツバキの島」としてその名を知られている。
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みどころ

島内に数件ある民宿に泊まり、ゆっくり利島を楽しみたい。島は小さいため、徒歩で斜面地に広がるツバキを見て回るのが一般的。中央部の宮塚山にのぼって、全景を展望することもできる。ただし、道路及び散策路は集落部も含めて少しきつめの上り下りが基本となる。
 島の約80%を常緑樹であるツバキが覆っているので日本らしい四季を感じづらい一方で、「ツバキで四季を感じる」ことができる。 特に冬になると島中で咲き誇るツバキの花を見ることができ、花が散る2月下旬~3月頃にかけては、「ツバキの絨毯」と称される美しい光景がひろがる。また、段々畑となっている椿畑の景観のなかに溶け込んだような椿農家*の作業風景は、当地に固有な文化的景観といえる。
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補足情報

*椿油:利島の椿油は、ヤブツバキの種を100%使っており、椿実の収穫から搾油、商品梱包までの全てを島内で行っている。椿油は、ヘアケア、フェイスケアとして利用するのが一般的だが、全身のスキンケアにも使うことができる。最近では、食用としての使用も増えており、オリーブオイルよりあっさりした風味が好評で、サラダドレッシングのベースやパスタなどの料理に活用されている。
*椿農家:椿農家の仕事は1年仕事である。晩秋から初春の間に花を咲かすヤブツバキは、初夏から秋にかけて油を充分に含めた実(種)になる。利島では完熟して落ちた実(種)を拾うため、実(種)が大きく成長する夏に下草を刈る作業を行い、綺麗な林床をつくる。ツバキの実はとても小さく、色も茶色のため、雑草が生えていると大きな手間となることから、真夏の重労働でも惜しまず作業をおこなう。秋に入ると実(種)が完熟し、林床に落ちたものをひとつひとつ丁寧に拾い上げる。こうした根気のいる作業は冬の終わる3月末頃まで続く。実(種)は自宅の軒先などで乾燥させたのち、島内の製油センターへ持ち込まれ、純度の高い利島産椿油となる。 こうして椿農家は1年を通じてツバキと向き合いながら生活をしている。
関連リンク 東京都利島村(WEBサイト)
参考文献 東京都利島村(WEBサイト)
利島 椿油(利島農業協同組合)(WEBサイト)

2025年06月現在

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