谷川岳たにがわだけ

群馬・新潟の県境にある谷川岳は標高1,977m、オキノ耳とトマノ耳*の2つのピークを持つ。
 太平洋側と日本海側を分ける脊梁山脈にあたり、北西の季節風が吹きつける豪雪地域である。そのため、新潟県側は穏やかだが、群馬県側は雪崩による浸食作用のため荒々しい山相をなし、東側斜面にはマチガ沢・一ノ倉沢・幽ノ沢などの急峻な谷が湯桧曽川に落ち込んでいる。なかでも特に険しい一ノ倉沢の岩壁は、北アルプスの剱岳・穂高岳とともに日本三大岩場とされロッククライミングのメッカである。
 こうした峻険な山容の魅力に加えて、2,000mに満たない高度のわりに高山気分を味わえること、東京に近く便利なことから登山者が多いが、同時に「魔の山」のレッテルが貼られるほど多くの遭難者を出してきた*。地元では遭難防止のため多大な努力が払われているが、登山には慎重な行動が望ましく、特に岩登り・沢歩きには相応の熟練と技量が必要である。入山には登山カードの提出、谷川岳遭難防止条例による特定地域登山届の提出などが義務づけられている。
 登山を目的としなくとも「見る山」としての魅力も充分にある。ロープウェイで天神平からの谷川岳の山容を望むか、一ノ倉沢の下から岩壁を仰ぎ見ることもできる。
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みどころ

谷川岳のオキノ耳とトマノ耳からなる双頭峰(双耳峰)が特徴的で美しい。ロープウェイとリフトを乗り継いで天神峠の展望台に登れば、谷川岳をはじめとして、朝日岳、白毛門の峰々が一望できる。
 一方周辺の山々、仙ノ倉岳2,026m、茂倉岳1,978mに比べ谷川岳のピークは1,977mと低いため、遠方の標高の高い山々から眺めてもあまり目立たず、双耳峰の特徴で谷川岳と特定しなければならない。
 谷川岳が美しく遠望できる地域は沼田市周辺の利根川沿いがお勧めであり、特に積雪期の天気の良い日は双耳峰の真っ白な姿を利根川越しに望むことができる。
 谷川岳の一番の見どころはなんといっても一ノ倉沢の荒々しい岩壁であり、電気バスかトレッキングで一ノ倉沢出合まで向かうと、そこには息をのむような圧倒的な迫力の岩壁を真下から仰ぎ見ることができる。春の新緑と残雪、秋の紅葉と岩壁の対比など季節それぞれに美しい姿をみせる。
 岩登り以外にも、いくつかのルートから登山と眺望を楽しむことができる。谷川岳ロープウェイで登れば標高1,319mまで到達できるので、天候の変化さえ気を付ければ比較的容易に山頂に立つことができる。谷川岳の荒々しさを眺めながら登るのであれば、西黒尾根や厳剛新道の登山ルートがお勧めであり、感動を呼ぶ登山となるだろう。
 水上温泉街にある「みなかみ町山岳資料館」や土合駅付近にある「谷川岳山岳資料館」、ロープウェイ登山口駅付近にある谷川岳遭難者慰霊碑を訪れる時、一ノ倉沢衝立岩のロッククライミングの歴史やその悲劇に思いを巡らす。(林 清)
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補足情報

*オキノ耳、トマノ耳:「オキ」とは奥、「トマ」とは手前を意味する言葉で、水上方面から見たピークの位置関係となっている。耳は遠方から見ると動物の耳に見えるから。耳がふたつのため双耳峰ともいわれる。
*谷川岳遭難事故:これまでに800名を超える死者を出しており、世界の山の中でも最も多い犠牲者数である。遭難者の死亡原因は墜落・疲労凍死、雪崩が多く、遭難事故の多い原因としては気象の変化が極端に激しいこと、アプローチが短いため初心者がひきつけられやすいことなどがあげられている。岩登り途中での遭難事故の場合、救助活動が大変難しく、また死亡事故の場合は遺体収容が困難になる場合が多く、自衛隊の射撃でロープを切断した例もある。
関連リンク 一般社団法人みなかみ町観光協会(WEBサイト)
関連図書 深田久弥著『日本百名山』新潮社
参考文献 一般社団法人みなかみ町観光協会(WEBサイト)
一般社団法人みなかみ町観光協会(WEBサイト)

2020年04月現在

※交通アクセスや料金等に関する情報は、関連リンクをご覧ください。

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