殺生石(賽の河原)せっしょうせき(さいのかわら)

温泉神社に隣接する殺生石園地には亜硫酸ガスや硫化水素など有毒ガスが噴出し、硫黄の香りが立ち込め草木もない荒涼とした風景が広がる、賽の河原と呼ばれる場所がある。
 その園地の奥には能や謡曲の題材になり、芭蕉が「おくのほそ道」でも訪れ、九尾狐伝説にまつわる史跡の「殺生石」がある。
 九尾狐伝説とは、中国・インド・日本を舞台に悪行の限りを尽くした白面金毛九尾狐が那須の地で射止められ、巨大な毒石に姿を変え近づくものすべてを毒死させていたが、狐退治の読経により毒石が3つに割れ飛んだ、というもの。3つに割れた石の一つがここに残り、殺生石と名付けられたとされる。
 黒ずんだ輝石安山岩であるこの石は、白面金毛九尾狐の化身と言われ、退治された恨みを抱いて未だ毒気を吐いていると言われている。
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みどころ

周辺の緑とは対照的な岩だらけの風景、硫黄の香りが立ち込める賽の河原の情景は独特である。また、伝説や歴史に彩られた殺生石は、那須を代表する観光資源として海外の旅行客からも注目されている。(溝尾 良隆)
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補足情報

*2022(令和4)年3月5日に2つに割れていることが分かり話題となった。那須町観光協会は3月26日に「九尾狐 那須殺生石 慰霊祭並びに平和祈願祭」を開催し、観光関係者や観光客ら約150人が参列した。
*『おくのほそ道』で芭蕉がよんだ句:「石の香や夏草赤く露あつく」。
*殺生石の近くにある那須温泉神社は日本に数ある温泉神社の中で、最も優れた温泉神社の一つである。4万m2の自然林のなかを長い参道が続き、その奥に本殿がある。