霞ヶ浦かすみがうら

茨城県南部の淡水湖で、琵琶湖に次いで日本第2の面積をもつ。桜川・恋瀬川(こいせがわ)の下流部が沈降したところへ、海水が流れ込んで入江となり、そののち鬼怒川によって運ばれた沖積物が出口をせき止めたためにできた湖だ。香澄ケ浦(かすみがうら)とも書き、北浦に対して西浦とも呼ばれ、広い意味では北浦を含めて霞ケ浦という。北西部に高浜入と土浦入という2つの大きな入り江があり、かつてはそれぞれ常陸国国府の港や舟運の中心となる港の役割を担っていた。湖水は主に両入江に注ぐ桜川・恋瀬川から流入し、南東端で常陸利根川・横利根川へと流れ、利根川に連絡する。古代から舟運が盛んで、とくに利根川の東遷改修工事が完成した江戸時代の初期からは、江戸への物流の主要ルートになった。その後鉄道の発達で、舟運は衰え、帆曳船を使った帆曳網漁*も、動力船に代わってその姿を消した。
 広々とした沖積平野に囲まれた湖であったため、周辺は古くから栄え、数多くの貝塚や古墳*が点在し、鹿島神宮、香取神宮という2つの古社が鎮座するほか、舟運で栄えた土浦、佐原、潮来などに古い町並みも残る。また、こうした地形を活用して旧予科練も使用した霞ヶ浦飛行場*や日本中央競馬会(JRA)美浦トレーニングセンター*なども設置されている。さらに霞ヶ浦総合公園、歩崎森林公園、霞ヶ浦ふれあいランド、霞ヶ浦大橋など、霞ヶ浦を楽しむための公園やビューポイントも数多く、全長125km(霞ヶ浦一周コース)におよぶサイクリングコース「つくば霞ヶ浦りんりんロード」*が整備されている。
 動植物の生息も多様で魚の種類は40種を超え、ワカサギ・シラウオ・ウナギ・マブナ・ヘラブナ・鯉・ボラなどのほか、外来種のハクレン・ソウギョが繁殖しているため、年間を通じて釣りを楽しむことができる。土浦港には貸ヨット・貸船があるほか、遊覧船*も出航している。
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みどころ

東京の都心から1時間余りで、広々として、ゆったりとした雰囲気、環境を楽しむことができる。水郷筑波国定公園に指定され、筑波山をはじめ周囲の景観や季節、時間によって様々な姿を見せてくれ、ビューポイントも多い。
 これと言って際立った観光施設はないが、古い歴史を物語るものや昔の人の営みの痕跡が数多く遺されており、歴史散歩には好適。
 日本を代表するナショナルサイクルルートに指定された「つくば霞ヶ浦りんりんロード」はサイクリングロードの整備など、行政や民間が連携して霞ヶ浦を多面的に楽しめるように努力し、利用者が増えているが、継続的、積極的なプロモーション活動が今後も必要であろう。
 霞ヶ浦最大の湿地「妙岐ノ鼻」は貴重種19種を含む300種以上の植物が確認され、その植物を生息環境として利用するオオセッカやコジュリン等の貴重な鳥類も見られる。猛禽類のチュウヒのねぐら入りも確認される貴重な環境が残されている。(志賀 典人)
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補足情報

*帆引網漁:高さ約10m、幅約14mの帆に風を受けて、船を横に流しながら水中の大網を引いて魚を獲る漁法。夏期には観光帆曳船が出る。
*古墳:霞ヶ浦の北部、かすみがうら市、石岡市や行方市には、6~7世紀のものとされる舟塚山古墳、富士見塚古墳、三昧塚古墳などの前方後円墳をはじめ、円墳なども多数点在している。古墳を中心に公園や資料館が整備されているところもある。
*霞ヶ浦飛行場:1924(大正13)年、飛行船による世界一周を成し遂げた「ツェッペリン伯」号が飛来した飛行場。現在は自衛隊の駐屯地になっている。近くに予科練平和記念館があり、予科練、旧海軍航空隊に関する資料を展示公開している。
*美浦トレーニングセンター:日本中央競馬会(JRA)の東日本における調教の拠点。約224万m2という広大な敷地で約2,000頭の競走馬の調教を行っている。曜日などは限られるが施設見学やGI調教見学ツアーなどのイベントも行われている。
*つくば霞ヶ浦りんりんロード:霞ヶ浦(西浦)と筑波山方面にコースがある。125kmの霞ヶ浦一周コース以外に霞ヶ浦1周ショートコースで90kmなどのコース設定がなされている。筑波山方面と合わせた完全走破コースは180km。サイクリング拠点施設としてJR常磐線土浦駅に「りんりんスクエア土浦」があるほか、サイクルサポートステーションや休憩所・トイレが各所に設けられれている。
*遊覧船:土浦港から旧予科練沖を双胴型の高速遊覧船で、一巡するコースがある。