水戸芸術館みとげいじゅつじかん

市制施行100周年を記念して1990(平成2)年に開館した劇場・コンサートホール・現代美術ギャラリーからなる複合文化施設。12角形のACM*劇場は観客と俳優との一体感を高めるため舞台を中心に囲むように客席を設置。コンサートホールATM*の天井には音響効果を高める音響反射盤を設けている。現代美術ギャラリーでも展示器具等が展示作品に干渉しないよう壁・天井などに工夫が凝らされている。 現代美術ギャラリーは展示面積1,100m2に、全部で9つの展示室のほかワークショップ室、屋外展示としても使える2階回廊部分など、大きさや性質の異なる空間が連鎖的に構成されている。またトップライトによる自然光を採り入れられる展示室と通常の展示室が交互に配置され外部環境との繋がりが意識されている。施設全体で共有するエントランスホールは吹き抜けになっており、2階フロアから高さ11mの天井までパイプオルガンが設置されている。また野外イベントの開催も可能な広場の東側にはこの施設のシンボルとして高さ100mの三重螺旋形の塔が配置されている。
 施設運営*の理念として、「新しい芸術文化を創造する」、「国際的な視野にたって芸術文化の交流を行う」、「楽しみながら考える」、「市民の芸術文化活の拠点となる」、「都市の活性化に寄与する」といった複合文化施設を目指すことを掲げている。この理念に従い、参加型の文化活動、ワークショップなどを実施したり、地域で活動する芸術文化団体、組織との協働の場の提供など、地域連携も充実させている。また、自主企画による事業を中心とした運営を行うため、専属楽団「水戸室内管弦楽団」「新ダヴィッド同盟」、専属劇団「ACM」などを編成している。現代美術ギャラリーにおいても、現代美術を中心に、建築、デザイン、ファッションなどの分野にも焦点を当てた展覧会を企画し、アーティストと協同しながらの展覧会やワークショップに取り組んでいる。また、市民や団体と一緒に行う地域連携プロジェクトや教育プログラムも設定している。
 コンサートホールや劇場の空き状況により、館内の見学ツアー*を1日2回程度実施している。
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みどころ

磯崎新の設計による施設は、周囲の環境を意識して、低層ではあるものの、野外劇場にもなる前庭の緑に映え、美しい。また、100mの高さがある、きらめく多面体のシンボルタワーとのコントラストも見事だ。
 自主企画による多彩な事業を展開し、地域の文化活動の拠点としても、地域住民との連携もそここに見られ、現代美術ギャラリーのみならず、他の施設も含め、幅広い芸術文化を楽しむことができる。
 この施設自体は、周囲の都市環境、景観との連動性を盛り込んだ設計にはなっており、周辺も電線の地中化などは実施しているものの、周辺街区では、街路樹が不足気味で緑が少なく、店舗、建物などに芸術・文化的な雰囲気はまだない。近接して新市民文化会館の建設予定もあるので、行政、地域住民、水戸芸術館などがより一層連携して、芸術・文化ゾーン造りをおこなうことが必要であろう。(志賀 典人)
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補足情報

*ACM:ACTING・COMPANY・MITOの略
*ATM:ART・TOWER・MITOの略
*施設運営:水戸市は、同館の管理運営について、毎年度、市予算の1%を充てるという方針。
*館内見学ツアー:エントランスホール→ACM劇場→コンサートホールATM→塔(シンボルタワー)