田島衹園祭たじまぎおんさい

会津鉄道会津田島駅から北へ約500mにある田出宇賀(たでうが)*、熊野両神社の例大祭で、毎年7月22日、23日、24日の3日間開催される。
 田島衹園祭の淵源については、この地方が文治年間(1185~1190年)頃から下野に本拠地を置く長沼氏の支配下に入り、その長沼氏の守護神が牛頭天王(衹園信仰)だったため居城の鴫山城の守護神として祀り衹園祭の制を定め、旧来からの田島鎮守である田出宇賀神社の祭りと融合していったものだとされる。1590(天正18)年に長沼氏が伊達政宗に屈し、この地を去るとともに祭行事は中断されたが、1603(慶長8)年、町民の再興願いが会津藩(蒲生氏)の城代により許され復活した。1880(明治12)年から田出宇賀神社の隣地にある熊野神社祭礼も衹園祭の格例に準じ同時に行われるようになった。
 祭は、氏子の各町がお党屋組に編成され、当番制で祭事を担当するお党屋組制度によって運営されている。当年の当番3組と前年の当番の「渡し」といわれる3組、翌年の当番の「請取り」といわれる3組がそれぞれ役割を担い、氏子挙げての1年がかり*の大行事となっている。
 7月22日の宵祭では神事のあと、衹園囃子(しゃんぎり)が奏でられ、4台の屋台は子供歌舞伎*を各所で上演しながら巡行する。7月23日の本祭では榊迎えなどの神事のあと、七行器(ななほかい)*行列が行われ、行器の奉持者とその介添者が、男子は裃着白緒草履、婦人既婚者は丸髷、未婚者は島田髷を結い、晴着盛装をして神社に奉献する。お仕度触れがあった後、神輿巡行となる。子供歌舞伎を町内各所で行うため屋台も引き回される。時には激しい屋台運行がなされることから「けんか祭り」とも呼ばれている。7月24日は太太神楽が奉納され、神事祭事はフィナーレを迎える。この祭りは「けんか祭り」と呼ばれる以外にも、賄い献立にフキが出されることから「富貴祭(ふきまつり)」とも、御神酒が濁酒であることから「どぶろく祭り」ともいわれている。
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みどころ

華やかな衹園囃子のなか、町内各所で愛らしい子供たちの歌舞伎が屋台で演じられ、その屋台の移動時には激しい巡行がみられることもあり、町中が盛り上がる。七行器行列では30人余りの花嫁姿の女性も供奉し、粛々としたなかにも艶やかな彩りを添えてくれる。大正初期編纂の『南会津郡誌』では「神輿渡御ノ式アリ町民正装又武装シテ随伴ス其列舊時ヲ想起シテ實ニ壮観ナリ」と記している。この祭が時代を超え、営々と受け継がれてきたことが分かる。
 7月の祭の時期以外に田島を訪れた場合は、会津田島駅からすぐのところにある会津田島衹園会館に立ち寄ることをお勧めする。映像による祭の紹介とともに、七行器行列を人形で再現されており、また、屋台も展示され子供歌舞伎の一場面が飾り付けられている。
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補足情報

*田出宇賀神社:斉明天皇(594~661年)の頃の勧請とされ「往昔人此處ニ住ミシニ始メ飲料ヲ求ムルニ柳樹ノ下ニ靈線自ラ涌キ其中ニ稲生シテ實レリ」(『南会津郡誌』)としたことに始まり、江戸後期の「新編会津風土記」によれば御正躰(附懸仏)の書付には「長元2年」(1029年)とあるということから、その時にはすでに社殿が祀られていたと考えられる。                                                                                *1年がかり:1月中旬に、お党屋の男衆が身を清める神事に始まり、大祓いの式、しめ縄づくり、夜詣り、御神酒仕込み、御神橋架けなど数々の行事がある。                                                                 *子供歌舞伎:江戸時代末から明治初期にかけて上演されていたものが、青年会によって引き継がれて昭和30年代半ば(1960年頃)までは続いていた。しかし、諸般の事情から一時中断してしまったが、伝統継承の機運が高まり、1994(平成6)年から子供歌舞伎が復活することとなった。上演演目は『絵本太功記十段目 尼崎閑居の場』『一の谷嫩軍記 須磨の浦の段』や地元演目の『時津風日出の松 鴫山城内の段』『南山義民の碑 喜四郎子別れの段』などが演じられる。                                                       *七行器(ななほかい):7つの器を指し、濁酒の御神酒・赤飯・鯖を盛り納める。この行列は田出宇賀神社と合わせ、熊野神社にも奉献するので3つの行器も付け加えられており、合わせて10の行器を奉持し、100名ほどが供奉して列をつくる。
*日程:7月22日 例大祭 大屋台運行(屋台歌舞伎上演)/7月23日 渡御祭 七行器行列・神輿渡御・大屋台運行(屋台歌舞伎上演)/7月24日 大々御神楽祭 大々御神楽奉納