山形板そばやまがたいたそば

そば自体は、日本においても他の雑穀として混ぜ粥状にしたり、餅状にしたそばがきにしたりして、古代から食されてきた。現在の細長い麺の形になったのは、江戸初期の頃に「そば切り」が考案されたからだといわれている。その後、各地でその風土や文化に合わせ、そばの打ち方、つなぎ、出汁、付け合わせ、食べ方、そして、それに応じた器などが工夫されてきた。
 山形県内各地においても、伝統を受け継ぐそばや地域色豊かな食べ方が多種多彩にある。そのなかでも、長い板や木箱の上に1人前から数人前を盛り付ける「板そば」*は、山形ならでのは伝統を受け継ぐ、盛り付け方と器だ。おもに現在の山形県村山地方を中心に行われていた“そば振る舞い”の風習に由来するという。この風習の由来は、田植えや稲刈りなどの農作業を大勢で協力して行った後、そばを振る舞ったことによるという。この際、太めのそばを薄く均一に盛り付けるため、長い板や木箱に盛った方が蒸籠に盛るより、水分の吸収がそばに適しているからだともいわれている。
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みどころ

最上川と葉山の山紫水明の自然に囲まれた村山。その環境が生んだ厳しい寒暖の差が、そばの旨味ともなるデンプンを十分に蓄えさせることから、この地はそば栽培に適しているといわれている。そばの水分をほどよく保つことができ、木の香がする「板そば」の器は、この地で育まれたそばの風味をより一層引き立ててくれる。
 現在、「板そば」は、山形県内はもちろん、県外でも供されることもあるが、村山に伝わるそばの食べ方、器をしっかりと受け継ぎ、発祥の地で賞味してもらおうと、1994(平成6)年に10数軒のそば屋が軒を連ねる15kmほどの道のりを「最上川三難所そば街道」と名付け、官民を挙げて取り組んでいる。(志賀 典人)
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補足情報

*「板そば」:木箱状の器は日本海側の庄内では「そね」、新潟県の小千谷では「へぎ」と呼ばれ、それぞれ「そねそば」、「へぎそば」と言われている。新潟県小千谷の「へぎそば」はつなぎの材料に布海苔が使われ、食感が異なる。

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