神室山かむろさん

山形・秋田の県境にあり、栗駒国定公園の一角を占める。神室山(1,365m)を主峰に、黒森(1,057m)、水晶森(1,097m)、前神室山(1,342m)、天狗森(1,302m)、最高峰の小又山(1,367m)、火打岳(1,237m)などの山々が連なる。壮年期の隆起山塊で、多雪地帯で気候が厳しいことから、稜線は非対称に削ぎ落とされ、急峻な山容をみせる。ブナ林や約130種にのぼる高山性および亜高山性の植物*が分布し、とくに神室山の山形県側のブナ林はほぼ原生の状態が維持されている。山頂からの眺望は、神室連峰はもとより月山や鳥海山、朝日連峰などの山々を360度の大パノラマで楽しめる。登山口は、秋田県湯沢市役内口、山形県金山町水晶森口、有屋口、蒲沢口、新庄市土内口などがあるが、稜線は痩せ尾根が続き、水場の確保も難しいため、健脚者向きの登山コースである。
 神室山は、古くは山岳信仰の山として栄え、多くの行者が集まったといわれ、伝説、民話も数多い。そのひとつに、西麓の新庄市では神室山に天狗が住んでいたという伝説があり「天狗森」・「天狗の相撲取り場(八森山)」などの地名も残る。
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みどころ

標高はさほど高くない山並みだが、多雪地帯で気候も厳しく、急峻なところもあるため、上級、中級の本格的な山歩きを楽しむには恰好な山である。神室山、小又山、火打岳などの山頂やそれをつなぐ稜線からは、月山、鳥海山、栗駒山など東北の名山の眺望が楽しめる。また、広大なブナの原生林の新緑、紅葉が見事。
 稜線部の「御田の神」近くの登山道沿いに、キヌガサソウの群生地があり、国内最大ではないかと、いわれるほど。6月下旬~7月上旬頃。(志賀 典人)
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補足情報

*高山性および亜高山性の植物:春には、雪の上でマルバマンサクが咲き、ブナの新緑が山を登り、広がっていく。稜線の縦走路ではカタクリの花を見ることができる。さらに、ムラサキヤシオ、シラネアオイ、ミネザクラが咲き競う。ミネザクラに続いてキヌガサソウ、ニッコウキスゲやハクサンシャクナゲが咲き夏を迎える。秋に向け、ウゴアザミやエゾオヤマリンドウ、オクトリカブトなどが咲く。紅葉はブナをはじめ、山腹のハウチワカエデやヤマモミジ、稜線ではミネカエデなどが山を染める。