飯豊山(飯豊連峰)いいでさん(いいでれんぽう)

山形、福島、新潟の3県にまたがる飯豊連峰の総称。標高2,128mの大日岳を最高峰に、飯豊本山とも呼ばれる飯豊山(標高2,105m)など、2,000m級の山々*が約20kmにわたって連なる。花崗岩と中古生層から成る褶曲山地で、氷河地形、周氷河地形及び雪食地形*が見られ、稜線の東西で地形が大きく異なる非対称山稜を形成している。植生も雪田群落など多雪地帯の特徴をよく示し、標高1,500m以上の稜線付近にはハイマツ群落、イイデリンドウ、シラネアオイ、ヒメサユリなど高山植物のお花畑が点在し、1,500m以下ではブナを中心とした原生林が広がる。とくに天狗平の登山口から入る温身平のブナ林には巨木が多く、ヤチダモ*の大木でも知られている。動物ではツキノワグマ、二ホンカモシカ、ヤマネ、ニホンザル、オオタカ、イヌワシ、クマタカなどが生息する。山岳信仰*の登拝は古くから行われていたが、山が深く、険しいことから一般的な登山が本格化したのは、1950(昭和25)年に磐梯朝日国立公園として指定されてからである。このため、自然の状態がよく保存されていることでも知られる。
 山腹に残雪が描く雪形が、麓の農民の農事暦となって古くから信仰の対象にされ、中心の飯豊山は飯を豊かに盛った姿からその名が付いたといわれ、この地で広く親しまれてきた。飯豊山山頂手前に飯豊神社*の社(やしろ)が祭られており、かつての登拝者、修験者たちは麓で精進し、信心のため命がけで登ったという。現在も、登山者は避難小屋に泊まりながら縦走する必要があり、天候的にも降雪量が多く、梅雨期には濃霧も多いので、上級者向きの山である。登山口としては、山形県側では、小国町から入る天狗平口、飯豊町から入る大日杉口、福島県側では、喜多方市から入り飯豊山神社への表参道となる川入登山口、西会津町の弥平四郎登山口、新潟県側では、胎内市から入る胎内口、関川村から入る大石登山口、阿賀町からは入る実川登山口などがある。
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みどころ

深田久弥の日本百名山のなかでも、「大きな残雪と豊かなお花畑、尾根は広々として高原を逍遥するように楽しく、小さな池が幾つも散在」し、「主脈の峰々がいずれも堂々と独立して、まるで一城のあるじのように大きく見え 」ると絶賛している。
 20kmに及ぶ連峰であることから、日本海から朝日連峰、蔵王連峰、西吾妻山、磐梯山までの様々の大眺望が楽しめる。しかし、なんといっても、幅広い稜線が連なる飯豊の主要峰の新緑や紅葉の眺望が見事だ。1809(文化6)年に改訂された新編会津風土記にも「西ニ越後佐渡北ニ出羽ノ山海ヲ望ミ天気晴朗ナレハ駿河ノ富士モ遥ニ見エテ限界甚タ広シ」とあり、「七八月ノ間登山スルモノ桜花ヲ見杜鵑ヲ聞キ黄葉を踏ミ四時ノ風物一時ノ佳観ニ入ル里俗四季ノ山ト称する」と記されている。
 飯豊連峰の東西に伸びる山稜は幅広い景観を形成し、多雪地帯であることから、数多くの小さな池塘を生み、高山植物を豊かにしている。
 飯豊山は登山者にとっては、地形、天候とも険しく厳しいので技術、体力がともに求められるが、それだけに登る山としての評価は高い。(志賀 典人)
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補足情報

*2,000m級の山々:最高峰の大日岳、および飯豊山以外にも、御西岳2,012m・北股岳2,025m・西大日岳2,092m、烏帽子岳2,018m。
*周氷河地形及び雪食地形:周氷河地形は「岩石・土壌中の水の凍結・融解の繰り返しによる破砕と移動、河川・雪・風・海氷による浸食など、氷河と森林限界との間の寒冷な地域に特有な浸食作用によってつくられた地形」(大辞林)。小国にはアバランチシュート(雪崩で磨かれた樋状の地形)や雪崩地形に繁茂する雪食植生(マンサク・タニウツギなど)が広く分布している。
*ヤチダモ:モクセイ科トネリコ属の落葉広葉樹。温身平の大木は幹周り4.65m、樹高34m、樹齢(推定)190年以上。
*山岳信仰:飯豊山の山岳信仰のはじまりは、役ノ小角の開基といわれるが、 これは後付けといわれている。 古くから祖霊神、五穀豊穣神として、麓の民からの信仰があり、神仏習合によって五社権現と称され崇敬されていた。新編会津風土記(一戸村)によれば、1595(文禄4) 年、会津の領主であった蒲生氏郷 が真言宗蓮華寺の住職宥明の勧めで、荒廃した登山路を修復し、社殿を再建した。それを機に、飯豊山信仰が再び盛んになったという。明治期の神仏分離以降は飯豊山神社となった。
*飯豊山神社:御前坂付近から飯豊山神社までの約4km、幅90cmほどの登山道は福島県喜多方市に属し、登山道の東側は山形県、西側は新潟県となっている。こうした県境は、さらに飯豊山神社から飯豊山の山頂を経て御西岳まで約7.5km(途中から旧参道を含め約100~300mの幅)続く。これは、廃藩置県が施行された際、飯豊山神社に15歳までの少年が登拝するという成人儀式を行っていた福島県一戸村がこの道を福島県側に属させるよう主張したことによる。
関連リンク おぐにの登山情報(小国町観光協会)(WEBサイト)
関連図書 深田久弥著『日本百名山』新潮社、『分県登山ガイド 山形県の山』山と渓谷社、2017年、デジタルコレクション『新編会津風土記』国立国会図書館
参考文献 おぐにの登山情報(小国町観光協会)(WEBサイト)
やまがた山(山形県環境エネルギー部みどり自然課)(WEBサイト)
山形県(WEBサイト)
『平成26年度世界自然遺産候補地詳細調査検討業務報告書』環境省
林野庁東北森林管理局(WEBサイト)

2020年12月現在

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