秋田駒ヶ岳あきたこまがたけ

秋田駒と呼ばれる、田沢湖の北東にある火山である。頂上部は楕円形の大きな火口があり火口内にある火口丘を女岳(めだけ)と呼び、外輪山に男岳(おだけ)と標高1,637mの最高峰男女(おなめ:女目とも)岳がそびえている。那須火山帯*1に属し、近年では1970(昭和45)年9月に女岳でマグマ噴火があり、約4カ月で噴火は停止したものの、その後も地熱、噴気活動の活発化などの状況が続いている。
 山頂部からの眺望はよく、西には眼下に田沢湖と田沢湖高原、東には岩手山から裏岩手連峰、八幡平方面を望む。山頂部の阿弥陀池付近はコマクサ*2・ムシトリスミレ・ヒナウスユキソウ・ガンコウランなどの高山植物が群落をなし、その種類の豊富なことで天然記念物の指定をうけている。山麓には国見温泉*3、乳頭温泉郷などの温泉が湧き、西斜面はスキー場の開発もされている。
 駐車場のある八合目休憩所から山頂部の阿弥陀池を中心に男岳・男女岳などを巡ることができる。ただし、マイカー規制実施日*4は山腹の「アルパこまくさ」で路線バスに乗り換える必要がある。女岳周辺では噴気活動などの火山活動が活発な所もあるので、登山には十分注意が必要であるとともに、登山にあたっては最新の火山情報を確認のこと。
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みどころ

深田久弥の「日本百名山」には取り上げられていないが、その後記では「東北地方では、秋田駒ヶ岳と栗駒山をいれるべきであったかもしれない」としている。ここまで、深田久弥に言わしめるには、ひとつには、山頂部の阿弥陀池を中心とした開放的な大火口原だろう。八合目と阿弥陀池のほぼ中間にある片倉岳展望台からは、雄大に広がる樹林帯の先に森吉山や田沢湖が望め、澄み切った青空、周囲の峰々と新緑や紅葉を映す阿弥陀池などが魅力的だ。阿弥陀池には周囲に木道が敷かれ、西側には、お花畑が広がり、火山としての荒々しい山姿とは別の顔も見せる。さらにもうひとつ魅力をあげるとすれば、高山植物の豊富さであろう。田中澄江に「新・花の百名山」のなかで「秋田駒には乾性、湿性の花が、私が一つ一つ見ただけで百種以上咲いていた。山域もひろいが、花の種類も多い」とし、「どうか 秋田駒を高山植物の宝庫として永遠に子孫に伝えて下さい」とまで言わしめている。
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補足情報

*1  那須火山帯:南は浅間山付近から北は北海道の樽前山あたりまで、ほぼ東北の中央部を貫く火山帯である。八甲田山・八幡平など東北の多くの火山がこれに属しているが、日本海側は鳥海火山帯が通っている。
*2 コマクサ:岩礫地に生育するケシ科の高山植物。7~8月に可憐な淡紅色の花をつける。八ケ岳以北の高山に多く見られたが、最近激減している。
*3 国見温泉:岩手県との県境、駒ヶ岳の南麓の国見峠にある温泉。旅館や日帰り温泉施設が3軒ある。泉質は炭酸水素塩泉中性高温泉、泉温50℃で、緑がかった湯が特徴。11月初旬〜5月中旬は休業。
*4 マイカー規制実施日:6月1日〜10月20日までの土曜日、日曜日、祝日と6月21日〜8月15日の平日
関連リンク 仙北市(WEBサイト)
関連図書 『秋田県の山』佐々木民秀 山と渓谷社、『日本百名山』深田久弥 新潮社、『新・花の百名山』田中 澄江 文藝春秋
参考文献 仙北市(WEBサイト)
十和田八幡平国立公園(環境省)(WEBサイト)
十和田八幡平国立公園(環境省)(WEBサイト)
文化遺産オンライン(文化庁)(WEBサイト)

2023年06月現在

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